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鬼ヶ瀬塚村
第5章 宗二
『カヤさん、すみません挨拶が遅れてしまい…すみません…東京から来ました田中と言います』
僕は深々と頭を下げながら彼女に言った。
『………』
カヤさんは反応なく何やら聞き取れない小さな音で何かを呟いていた。
『があぢゃんッ!!』
大人しくしていた吾朗さん、つまりカヤさんの夫が叫ぶように言った。するとカヤさんはシワだらけの顔を初めて上げ、僕を見つめた。
両方の目はたるみで形を歪ませていたが、左目蓋は三重だった。
『うぬが………』
カヤさんがザラザラした声で言う。
『うぬが………まりごの…………』
それっきり、祖母カヤさんは黙ってしまった。
『ボケてんね、ばっちゃん』
優子ちゃんが煙草に火を点けながら言う。
『81だがんね?ボケでんだわ』
優子ちゃんはそう言ってカヤさんの顔の前に煙をモクモク漂わせる煙草を近付けた。
顔から数cm前に分厚い煙と煙草の先の熱を与えてもカヤさんはピクリとも動かなかった。
『優子、やめなさい』
宗二さんが言うと優子ちゃんはクスッと笑って煙草をカヤさんから離した。
僕は深々と頭を下げながら彼女に言った。
『………』
カヤさんは反応なく何やら聞き取れない小さな音で何かを呟いていた。
『があぢゃんッ!!』
大人しくしていた吾朗さん、つまりカヤさんの夫が叫ぶように言った。するとカヤさんはシワだらけの顔を初めて上げ、僕を見つめた。
両方の目はたるみで形を歪ませていたが、左目蓋は三重だった。
『うぬが………』
カヤさんがザラザラした声で言う。
『うぬが………まりごの…………』
それっきり、祖母カヤさんは黙ってしまった。
『ボケてんね、ばっちゃん』
優子ちゃんが煙草に火を点けながら言う。
『81だがんね?ボケでんだわ』
優子ちゃんはそう言ってカヤさんの顔の前に煙をモクモク漂わせる煙草を近付けた。
顔から数cm前に分厚い煙と煙草の先の熱を与えてもカヤさんはピクリとも動かなかった。
『優子、やめなさい』
宗二さんが言うと優子ちゃんはクスッと笑って煙草をカヤさんから離した。