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鬼ヶ瀬塚村
第6章 晩餐
『しっかり担げやッ!!』

達弘さんが汗でテカッた表情で同じようにして隣でみこし台を担ぐ一郎さんに言う。一郎さんの額にも汗が光っていた。

『そーっと降ろせッ!そーっとじゃッ!』

達弘さんの一声でみこし台がゆっくりとちゃぶ台の上座へと降ろされていく。老婆のクシャクシャの顔もゆっくりと下りてくる。

『っしゃあーッ!はあッ!おんもてぇッ!!』

達弘さんはそう言って着ているTシャツの裾で汗を拭った。割れた腹筋がチラッと見えた。

『ばぁぢゃん、わかっか?飯の時間だば!?肉だよ、肉!あど、づけもんな!?大根のづーけーもーんッ!』

一郎さんが腰を屈めて老婆の耳元で言う。

老婆の反応はなかった。灰色に濁ったその両方の目は相変わらず宙を見ており、口はだらしなく開いている。

『ノブ、クニひぃばぁちゃんよ。お母さんのお母さんのお母さんよ』

真理子さんに教えて貰い僕はクニさんへ膝を向けて頭を下げた。

『東京から来ました!…田中と言います』

『………』

クニさんはピクリとも反応しなかった。ただただ、その異質な金箔の座椅子に埋もれるように座っている。

『もうほとんど耳が聞こえないのよ、でも大丈夫よ?ちゃんとわかってるから』

真理子さんがそう言っても僕はもう少し大きな声で

『よろしくお願いしますー!』
と言った。
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