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鬼ヶ瀬塚村
第6章 晩餐
優子ちゃんが箸を真ん中に並べられた焼き肉に伸ばそうとする。
『優子!やめなさい!』
宗二さんが怒りのこもった声をあらげた。温厚な彼からそんな声が出るのかと驚いた。
『はいはい…わがっでるよ』
優子ちゃんは箸を引っ込めてちゃぶ台の上にアゴを乗せた。拗ねたのか唇を可愛らしく尖らせている。
『ノブも少し待ってね』
真理子さんが小声で僕に囁く。
『見てて』
真理子さんに言われて僕は上座に座るクニさんを見た。金箔の飾られた豪勢な座椅子に傾いて座っているクニさんに窪塚のおばさんと一郎さんが挟むようにして彼女へ身体を向ける。
そして手のひらサイズの小皿を窪塚のおばさんが取り上げた。小皿には何か黒々とした物が上にのっていて、すみには青ネギらしき物が添えられている。
それをクニさんの右側から身体を向ける一郎さんが箸でつまむ。目を細めて僕は懸命にその静かな光景を見ていた。
居間にいる全ての人間がクニさんを見つめている。
つまみ上げられた黒い物体が一郎さんによってクニさんの口元へと運ばれる。
クニさんの左側では窪塚のおばさんが物体の下へ小皿を向けいつ落ちても大丈夫なようにしていた。
テレビの中の元テニスプレイヤーがやかましく"熱くなれ!熱くなれ!"と叫ぶ声だけが居間に響いていた。
『優子!やめなさい!』
宗二さんが怒りのこもった声をあらげた。温厚な彼からそんな声が出るのかと驚いた。
『はいはい…わがっでるよ』
優子ちゃんは箸を引っ込めてちゃぶ台の上にアゴを乗せた。拗ねたのか唇を可愛らしく尖らせている。
『ノブも少し待ってね』
真理子さんが小声で僕に囁く。
『見てて』
真理子さんに言われて僕は上座に座るクニさんを見た。金箔の飾られた豪勢な座椅子に傾いて座っているクニさんに窪塚のおばさんと一郎さんが挟むようにして彼女へ身体を向ける。
そして手のひらサイズの小皿を窪塚のおばさんが取り上げた。小皿には何か黒々とした物が上にのっていて、すみには青ネギらしき物が添えられている。
それをクニさんの右側から身体を向ける一郎さんが箸でつまむ。目を細めて僕は懸命にその静かな光景を見ていた。
居間にいる全ての人間がクニさんを見つめている。
つまみ上げられた黒い物体が一郎さんによってクニさんの口元へと運ばれる。
クニさんの左側では窪塚のおばさんが物体の下へ小皿を向けいつ落ちても大丈夫なようにしていた。
テレビの中の元テニスプレイヤーがやかましく"熱くなれ!熱くなれ!"と叫ぶ声だけが居間に響いていた。