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鬼ヶ瀬塚村
第6章 晩餐
黒い物体はゆっくりとクニさんのカサカサに乾いた唇に近づいていった。
奇妙な静けさの中、一同の息が一つになっている。なんだか不気味に感じた。
クニさんがゆっくりと口を開く。
ちょうど"お"を発音する時のように開かれた中にはネットリとした唾が糸になっているのが僕にでも見えた。
歯は一本もないようで、椿の花弁のような赤い歯茎が上下にうっすら見えた。
一同がそれを一声も発っさずに見守っている。
一郎さんがハシの先をゆっくりと"お"の中へ入れた。"お"は静かに閉じ、小さく"ん"ま"ん"ま"と動いた。そしてクニさんは少し震えながら座椅子のひじ掛けをシワシワでミイラのような手で掴んだ。
"ゴクッ…"
彼女がそれを飲み込む音がハッキリと聞こえた。
そして飲み終えると、クニさんはブツブツ何かを呟きながら座椅子へとまた埋もれていった。
『では、召し上がりましょうか』
それを見届け終わって宗二さんが言った。
僕はハッと我にかえるような感覚に陥っていた。
周りを見ると一同はすっかりクニさんなんて忘れたかのように、肉や野菜や漬物をつついている。
『ほら、ノブも食べなよ。美味しいよ?』
真理子さんが隣でニコリと微笑む。
奇妙な静けさの中、一同の息が一つになっている。なんだか不気味に感じた。
クニさんがゆっくりと口を開く。
ちょうど"お"を発音する時のように開かれた中にはネットリとした唾が糸になっているのが僕にでも見えた。
歯は一本もないようで、椿の花弁のような赤い歯茎が上下にうっすら見えた。
一同がそれを一声も発っさずに見守っている。
一郎さんがハシの先をゆっくりと"お"の中へ入れた。"お"は静かに閉じ、小さく"ん"ま"ん"ま"と動いた。そしてクニさんは少し震えながら座椅子のひじ掛けをシワシワでミイラのような手で掴んだ。
"ゴクッ…"
彼女がそれを飲み込む音がハッキリと聞こえた。
そして飲み終えると、クニさんはブツブツ何かを呟きながら座椅子へとまた埋もれていった。
『では、召し上がりましょうか』
それを見届け終わって宗二さんが言った。
僕はハッと我にかえるような感覚に陥っていた。
周りを見ると一同はすっかりクニさんなんて忘れたかのように、肉や野菜や漬物をつついている。
『ほら、ノブも食べなよ。美味しいよ?』
真理子さんが隣でニコリと微笑む。