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鬼ヶ瀬塚村
第6章 晩餐
大口を開いて肉を押し込む真理子さんが宗二さんに言う。

『お父さん』

一同の中で上品に食べていた宗二さんがハシを持つ手を止めた。

『どうした?』

『お母さん一階で食事出来ないくらいなの?』

確かに、居間には真理子さんの母親である弘子さんが姿を現していない。

『いや、少し脚が痛むらしくてね。さっき先に部屋で晩飯は済ませてあるだ』

『そうなんだ』

真理子さんはそう言ってから、今の話を全く興味がなかったかのようにハシを肉へと伸ばす。

ハシは行ったり来たりしていた。
肉を行けば口に、口に行けば肉へ…肉、口、肉、口…と世話しない。

真理子さんだけじゃない。
優子ちゃんも先程から大口を開いて食べている。
育ち盛りだからだろうが、尋常な量とは思えなかった。

一方で2~3度ハシを肉に伸ばした程度で吾朗さんは野菜や漬物類ばかり食べていた。
祖母のカヤさんもほとんどハシを動かさない。
上座のクニさんは眠っているようだった。

やがてちゃぶ台上に惜しげもなく並んだ肉や野菜は散り散りとなり、一同も姿勢を崩してそれぞれくつろぎだした。

達弘さんが煙草に火を点けると、優子ちゃんはこっそりその箱を引き寄せた。
そして達弘さんがテレビに夢中になっている隙に煙草をくわえて火をつける。

『あッ!おめまた人のもん吸ってんのかッ!?』
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