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鬼ヶ瀬塚村
第6章 晩餐
達弘さんは優子ちゃんから煙草をひったくった。

『切れてないんだっぺ』

『行商日まで待でやッ!』

『我慢できんのじゃ…』

達弘さんと優子ちゃんのやり取りを見ていても、宗二さんは優子ちゃんの喫煙に対して何も言わなかった。どこか悲しげだったがやめるよう彼女に言う事はなかった。

一番先にハシを伸ばそうとした彼女に厳しく制止していた宗二さんなのに、モクモクと煙草の煙を上げる優子ちゃんにはノータッチなのだ。
僕はとても不思議に感じた。

………

東京からの手土産も振る舞い、居間が更に賑やかになったところで真理子さんが立ち上がった。

『私、少し仕事してくる』

まさかこんな時にわざわざ口に出さなくても…僕は小さくうなだれた。

『大先生は大変だねぇ、な、そう思わねぇが?』

達弘さんがニヤニヤ嫌な笑みを浮かべながら僕に言ってくる。彼は僕を馬鹿にしているのだ。

『達弘、ノブも立派な漫画家なんだから!ちょっとは敬意を払いなさいよ?』

真理子さんはそう言ったけど、達弘さんは"へっ"と鼻で笑い

『オラぁよ、尊敬してる漫画家はこの世で1人なんだよぉ』

と言いながら僕の顔に煙草の煙を吹き掛けてきた。白い煙の中、彼の挑発的な笑みが見える。
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