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鬼ヶ瀬塚村
第2章 出発から村人の出迎え迄
僕は外の景色を静かに眺めていた。

車が赤信号で停車し、真理子さんが"ふぅ"と息をついて伸びをする。

早起きが苦手な真理子さんには辛い運転のようだ。

沈黙の中、真理子さんが煙草に火をつける。
僕は無言で窓を少し開けた。

ネットリと粘着質をもった生暖かい風が少し入ってくる。

その景色を僕は見ていた。

ワイシャツを腕捲りし、ハンカチで汗を拭いながら足早に急ぐサラリーマン。

白く大振りの日傘を手に歩ける事が不思議なくらい高いヒールを履いて颯爽と歩く女性。

ベビーカーを押しながら、清涼飲料水らしき飲み物を飲む主婦。

アイドルの写真やらキャラクターのイラストが印刷されたうちわを仰ぎながら談笑している女子高生達。

彼らは本当に生きている。

そして明日に繋がる今日を一つづつ小さくも強かに築き上げている。

彼らは肉きゅうミケ先生を知っているだろう。
真理子さんがその気になれば人だかりだって出来るかもしれない。

僕?
僕を知っている人なんてほとんど限られてるだろう。この世に送り出せなかった漫画はいくらでもある。
最初で最後の読者が編集者だった事なんてザラだ。
『ノブ、途中でコンビニ寄っていい?煙草と珈琲買いたいの』

信号が青に変わり、真理子さんがアクセルを踏みながら言う。

『うん、いいよ。ケント1mgとボス缶だね?』

『そ、車で待ってるからその時はよろしくねー』

………

景色が県境に差し込んだあたりには気温はとてつもなく上昇していた。

真理子さんはボス缶2本目をグイッと仰ぐと大きなアクビをして高速の道を真剣に見つめていた。

流れが悪く、予定より遅れて到着しそうだ。

少しすると渋滞に巻き込まれ、車は完全に停止してしまった。

待つのが嫌いな真理子さんは苛立ちを見せながら"あ~…めどだわ、本当に腹立つ"とハンドルを長い人差し指でトントン叩いていた。

『真理子さん…あの、僕運転変わろうか?』

『え?ノブが?いいよ、サーフ車体高いしタイヤでかいから運転難しいよ』

真理子さんは笑って言う。

僕は

『…そっか、そうだね…』

と笑い、意味もなくナビを弄った。

手違いで目的地周辺ページにナビが画面変更した。

『あ…ご、ごめん…』

『ね?何もないでしょ?』
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