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鬼ヶ瀬塚村
第7章 少女の想い
『ん…ぐッ…喋っだ』

優子は苦しそうに顔を赤くしている。

『真理子さん、やめろよ!可哀想だろ!』

僕は強引に真理子さんと優子を引き剥がした。いい加減掴むのに疲れていたのか、すんなり真理子さんは優子から離れた。

優子はケホッケホッと咳をしていた。

そして

『あ…』

と悲しげにこぼした。
彼女の踵が当たり倒れたバケツは花火を浮かせながら地面に大きな水溜まりを作っていたのだ。

『まだいっばいあっだのにぃ…濡れで…もぅできんば………』

優子が泣きそうな声を上げる。

『優子、あれだけ言っちゃ駄目って言ったでしょ!』

『オラぁ言っでねぇよ!ただTSUNAが来だんだってだげ言っただけじゃい!』

再び乾いた音が当たりに響き渡る。
本日3度目の平手打ちを真理子さんは優子に食らわせた。

その時、優子があれだけ喜んでいたイヤリングが片方だけ大きな円を描いて飛んでいった。

『あ…ッ!』

優子は慌てて四つん這いになる。
そしてイヤリングが落ちたであろう草むらをガサガサ掻き分け始めた。

『ないッ…ないッぺ…ノブが…ノブがオレにぐれだのにぃ!!姉ちゃんの馬鹿じょこおぉ!!』

優子は突然ワァッと声を上げて泣き出し、その場を走り去っていった。水溜まりがはね、僕のジーンズに泥が飛んだ。
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