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あなたの胸の中で眠る花
第4章 再会

近所のファミレスで夕飯を済ませた後、すぐにアパートに帰った。真ちゃんは疲れていたようで、部屋に入ったらすぐ眠ってしまった。ベッド横の絨毯で気持ち良さそうに寝息を立てている。私はベッドから毛布を抜き取り、真ちゃんにかけてあげた。

歯ブラシを取ってベランダに出る。寒いけど、夜空を眺めながら歯磨きするのが私の日課。

隣のベランダから煙草のような白い煙が空へと上っていく。なんとなく隣を覗き込むと、一条さんが煙草をふかしていた。哀愁漂うその横顔は年齢を感じさせず、大人の色気を醸し出す。
一条さんがこちらに気付き、ニコッと微笑んだ。

「こんばんは」
「…どうも」

相変わらず素っ気ない私。知り合いの知り合いってどう接すればいいか分からない。長い沈黙が二人の間を流れる。私はそれが気まずくて歯磨きの音を響かせる。こちらの様子を伺いながら、先に話しかけたのは一条さんだった。

「あの、間違っていたら申し訳ないんだけど…片瀬さんと、どこかで会ったような気がするんだ」

歯磨きの手が止まる。私も同じことを考えていたから。でもいまいち思い出せない。

「さっき会った時にも考えていたんだ。塾に通っていた生徒ではないし…うーん…」

私も歯ブラシを咥えながら考える。
パーマのかかったボサボサの髪に、うっすら生えている無精髭、ネイビーのマフラー……



「「あっ!」」

二人の声が重なった。歯磨きのせいでうまく喋れないので、私は歯を濯ぎに洗面所へ急いだ。ベランダに戻ると、一条さんが驚いた様子で話しかけた。

「去年の十二月、電車で倒れた子?」
「…そうです」
「そうだ、思い出した!あの時はびっくりしたよ…でも無事だったんだね?」
「はい…あの、もしかして病院に連れて行ってくれたのは…一条さん?」
「え?あぁ、まぁ。仕事の用事があって、すぐに病院を出たけど。後から看護師さんに聞いたら、もう退院したって言ってたから」

一条さんは頭を掻きながら照れたように笑った。
私が退院した後、病院に行ったんだ。知らなかった。

「あの、ありがとうございました。名前分かんなくて、ずっとお礼できなかったから…」
「いや俺がいいって言ったんです。名乗るほどの者でもないし…当たり前のことをしただけです」

助けてくれたのが一条さんだと分かると、作っていた心の壁がゆっくりと崩れる。
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