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あなたの胸の中で眠る花
第5章 ♦︎曖昧な恋心*

今でこそ仲は良いが、出会った当初は大嫌いだった。
心はすごい人見知りで、誰とも話そうとせず、下を向いてばかりでよく部屋に引き篭もっていた。
俺はそれが気に入らなくて、イライラして頭をグーで殴ったこともあった。もちろん心は大号泣。佳永子先生によく叱られていた。
父親が死んだからってなんだ。
俺なんか最初からいねーのに。
当時は物凄く捻くれていたと思う。父親も、母親も知らない。
物心ついた頃にはもう施設にいたから、そこが俺の居場所だった。施設には佳永子先生や他の子どもたちがいたし、全く寂しくなかった。それだけで十分だったのに、成長するにつれて知らなくていいことも耳に入るもんだ。
親に捨てられた自分は、他人に見放されなかった。
こんな馬鹿みたいな現実、笑っちゃうだろ?
だから、本当の親とか、血の繋がりとかそんな言葉は信用しない。
そんなのなくても生きていけるから。

