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あなたの胸の中で眠る花
第5章 ♦︎曖昧な恋心*

結局、部屋でダラダラしていたらあっという間に15時になっていた。やべ、もう出ないと。
一日限定のニート生活もまぁ悪くない。久しぶりに会えた一条さんの部屋のインターホンを鳴らしたが、留守だった。色々忙しいんだろう。また飲みながら話したいな。一条さんは真面目でお堅い印象だけど、俺みたいな学生の気持ちをよく理解してくれる。
一条さんが隣なら安心かな。すごくいい人だし、なんかあったら助けてくれるだろう。
俺は急いでスニーカーを履き、玄関のドアを開けた。
太陽が出ていて昨日よりも暖かい。
心のバイト先の弁当屋まで二十分ちょっと。
走って到着すると、心はまだ店内にいた。お昼を過ぎたというのに、客は数人レジにならんでいた。
最後の客が出て行ったのを見ると、俺は何食わぬ顔で店に入った。
「いらっしゃいませー…」
「お姉さん、スマイル0円ください」
「……当店では販売しておりません」
さっきまで営業スマイルしてたのに、俺だとわかった瞬間、驚きつつもいつもの愛想のない表情になった。もうちょっと喜べよ!
「真ちゃん、どうしたの?」
「暇だから、迎えにきた」
余計な一言を添えるのは、俺の悪い癖。
なんだかんだ心はちょっと嬉しそう。あんまり笑わないやつだから、ふとした笑顔を見ると俺も嬉しい。
「ありがとう。寒かったでしょ?」
「まぁ朝風呂入ったからなー」
「こっちに来て風邪ひかないでよ」
「なんか今の、佳永子先生みてぇ」
「そりゃあ、佳永子先生に育ててもらったからね」
心は得意げに俺を見た。将来は先生みたいになんのかな。何となく想像してしまい、一人で笑う俺。
「そうだ、お弁当もらったから後で食べよう?」
そう言って、持っていた袋を俺に見せる。
「まじで!やった。つーか唐揚げ増えた?」
「サービスしてもらった」
心の働いてる弁当屋は無添加が売りらしく、優しい味で近所の人がよく通っている。心がバイトを始めてから、何度か食ったことがある。
心は他のスタッフに挨拶して、俺と一緒に店を出た。

