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人魚島
第4章 咲子の村案内
咲子がハンカチで股関を拭い、僕からコンドームを取り去りそのまま音楽室のゴミ箱に捨てた。

『セックスした事バレ無い?』

『大丈夫やけん、上級生はみんな音楽室でヤルけん、じゃし夏休みやけん誰が侵入したか解らんけん』

『なら大丈夫なの?』

『信じてや、大丈夫やけん、行こう』

咲子が僕の陰茎をハンカチで丁寧に拭いながら『気持ち良かったけん』と頬を赤らめた。
『行こう』と咲子に手を引かれ僕等は音楽室からコッソリ出た。
カキーンッ!と相変わらず校庭からは野球部が切磋琢磨している音が潮騒に混じながら聞こえた。
そして玄関でスニーカーとサンダルを履いて眩しい西日の下に出る。
咲子が麦わら帽子を被り直しながら『次は交番と消防署行くけん』と原付のキーを回しエンジンを始動させた。
咲子の後ろに股がりながら僕は咲子の豊かな乳房に『咲子でかいね』と笑いながら指先を這わせた。
谷間が何やらグニャグニャする。
シーブリーズの香りがする咲子の首筋に鼻先を埋めながら僕等はフルスロットルで坂道を駆け下りた。
どんどん中学校が遠ざかって行く。
漁港の隅、白く濃紺の瓦屋根の交番が見えて来た。
軒先には筋肉質な身体にスラッとしたリーゼント頭の若い警察官が制服姿で猫に餌をやっていた。

『かっちゃん』

咲子が原付を停めて警察官に近付く。

『かっちゃん呼ぶな克己さんと呼べ』

ニヤリとしながら克己さんが原付に目配せし『まぁた2ケツか』と溜め息を吐き出す。
そして赤丸の箱を取り出し唇に咥え火を先端に付けて盛大に吸い込みながら白い副流煙を吐き出した。

『かっちゃん、勤務時間内やで?』

『ああ、そうか、なぁ、三咲は元気しとんのか?しばらくお前が大人しいからよ、なかなか会えん、相変わらずあの橘とか言うアホに尻尾振ってんのか?』

『かっちゃんまたヤキモチか?母ちゃんは橘の女やで?』

咲子が交番内に堂々と入りパイプ椅子にちょこんと腰掛け脚を投げ出す。

『解っとるけん、じゃけど一度でええから三咲を抱きたいな…なぁ、この餓鬼は誰や?』

若い頃の妻夫木聡みたいな大きな目を見開きながら克己さんが僕を見据えた。

『ああ、うちの魚沼の遠い親戚や、ひぃじぃちゃんくたばったけん葬式と通夜参加にはるばる東京から一昨日来てくれてん』

『へぇ、俺は高橋克己、克己さんで構わんぞ?31歳独身者や、なぁ、可愛い顔やな』
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