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人魚島
第5章 夏祭り
『と…年甲斐もぉ…無く泣いちまったよぉ』

橘さんがしゃがみこみ嗚咽を溢した。

『初めてや無いけん、初めてや無いけん、我慢出来たのに…うぅぅ…我慢出来んかったわッ!畜生ッ!』

橘さんが鍬を遠くに放り投げた。
空しくそんな姿を僕等は眺めていた。

『橘ぁ、悪いねんけど、コンドーム5つばかり売ってくれん?』

『はぁ?まだ2日しか経ってへんぞ?』

泣き腫らした目で発泡酒を呷りながら橘さんがつっけんどんに言い放った。

『じゃし、気分やあらへんッ!三咲か明さんから貰うんやなッ!』

『堪忍な、そこをなんとか?』

咲子が頭の上で合掌し『駄目?』と片目をうっすら開ける。

『アカン言うてるやろ、アホたれッ!今俺は最高に苛立ってるけん、邪魔や、あっち行かんかッ?』

『アカン…アホたれはどっちやねんッ?銭なら残ってるけん、煙草代金にせぇやッ?』

『何餓鬼の癖に盛っとんねんッ?なぁッ?生意気やぞッ?』

『ハルキと愛し合いたいだけやッ!』

つっけんどんに返し『母ちゃんから貰うけん、いけずッ!』と踵を返す咲子。
しっかり手を繋ぎ合いながら魚沼家に入れば事が済んだのか涼しい顔して明さんと三咲さんがイチャイチャ居間でキスし合っていた。

『なんや、咲子、コンドーム欲しそうな物欲しそうな顔してんなぁ?まさか使い切ったんけ?』

ニヤニヤしながら三咲さんが煙草の煙を吐き出した。

『ああ、バレた?くれや?』

『しゃあ無いなぁ、この島ではコンドームめっさ額高やねんから一個だけな?来週末まで持ち越しや?』

『そんな殺生言わんで?銭ならあるけん?』

『アンタそれは小遣いやろ?』

『まぁ、構わへんやろ三咲。今日位は俺に免じて1500円渡したれや』

明さんが三咲さんのCHANELの長財布を取り出し中から1000円札と500円玉を取り出し咲子の目の前に突き出した。
1500円あれば一箱コンドームを買える。

『父ちゃん構わんの?』

『構わん、ただし妊娠すなよ?コンドームの正しい使い方は知ってるんか?』

『根元迄空気入らんよに被せるんやろ?』

ケロッと答えてニヤニヤする咲子。

『せや、空気入ったら中で破れるけん、気を付けろや、なぁ、咲子そろそろ昼飯時や、もう9時やけん何か作れや』

『まだ9時やろ?』

『男だらけの海の上じゃあ9時と12時が昼飯や、知らんかったか?』
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