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人魚島
第2章 人魚島
咲子に僅かに似た咲子からすれば曾祖父の慎三さんが口を一本にグッと絞りこちらを見据えている。
咲子の様に芯の強そうな目付きだ。
ふと不意に花子も慎三さんに似ているのかも知れ無いと言う考えが浮かんだ。
咲子のパーツを花子に移植すれば想像しやすいかも知れ無い。
慎三さんが何故宝の様に魚を釣り上げたのか理由や経緯やらは解ら無かったがこの豪邸屋敷を見れば如何に独りで釣り上げたのか良く解る。
しかし、何を釣り上げたのだろうか?

『ねぇ、咲子、慎三さんは何を釣り上げたの?』

『内緒じゃ』

『え?』

『秘密じゃ、家族以外には教えられん』

そっぽを向く咲子。
なんだかムズムズし歯痒い。
慎三さんは一体何を釣り上げたのだろうか?
気になった。
昼食の時間になり、宗一さんと三咲さんと花子と春香さんと誠さんが卓袱台を囲んだ。

『うちは春香、よろしく』

『俺は誠』

二人とも筋金入りのワルそうだった。
髪の毛を無造作に脱色し春香さんは濃い化粧を施している。
誠さんは大学生らしいがまだ19歳にも関わらず煙草を吹かしている。
春香さんは16歳高校生らしい。
高校デビューなのか明らかに開け立てのピアスの穴が痛々しい。

『夕方晩飯前に花火やるから』

咲子がニコニコしながら言うと『良いよ』と春香さんと誠さんが頷いた。

『あ、あたしも』

花子が右手を上げてニヤリとすれば咲子が『アンタは駄目じゃけん』と突っぱねる。

『え?』

みるみる内に花子から笑みが消えた。

『花子は母ちゃんと宿題だ』

三咲さんが煙草を吹かしながら咥え煙草で素麺をつついた。

『え、やだ、あたしもハルくん達と花火やりたいよ』

三咲さんを見上げる花子、否、目があるなら、だ。
しかし三咲さんも花子の前で堂々としている。
やはり花子はドッキリでも無く悪戯の類いでも無いのだ。
宗一さんも静枝さんも静かに素麺を啜っている。

『アンタは駄目だ、魚人様のお怒りに触れるよ?』

魚人様?

『咲子、魚人様って?』

『花火ん時に教えるけん、黙って食え』

僕は黙って大人しく素麺を啜った。
三咲さんが不意に昼のバラエティー番組のテレビを付けて『ああん、セックスしてぇな、父ちゃんいつ帰るかなぁ』と煙草の輪っかをカクカク空中に浮かべた。
見事な輪っかだった。
バラエティー番組は賑やかだった。
何やら食レポが放送されている。
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