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人魚島
第5章 夏祭り
敦子さんがニヤリとした。

『ち、違いますよッ!た、橘さんの煙草とアルコール買いに来たんですよッ!』

僕は慌てて咄嗟に嘘を付いた。

『噂で聞いたよ?アンタ咲子とヤリまくっとるらしいな?もう咲子に赤神様はいらんな、穂波、アンタは来月ちゃうんか?来年にしとくんか?』

『…怖いけん…迷ってます』

『あ、あの敦子さん?赤神様について詳しく教えてくれませんか?』

『そんなん三咲に聞いたら?』

『三咲さん、なんか説明あやふやで…』 

『ほな、教えたるわ。赤神様ってのは14歳15歳の男女が島の20歳越えた大人と一晩セックスしてヤリ方を学ぶ性教育みたいなもんや』

やっぱりか。
なんか酷く泥酔し酔った橘さんが咲子に迫ってたし、三咲さんも早坂先生に『何賭けてんの?まさか来月の赤神様の相手やとか無いやんね?』とか言ってた気がした。
蓮さんに至っては『敦の初めて奪ったんはあたしや、あいつのチンコ赤ちゃんみたいに小さかったよ?あれじゃあ女の子悦ばれへんなぁ』だった。
やはり大人の男性が処女を、大人の女性が童貞を相手するのだ。
それが赤神様と言う名の性教育なのだ。
児童ポルノ禁止法が改正されて、その辺りに口やかましいがこのド田舎の人魚島では関係無いのだ。

『相手はどうやって決めるんですか?』

『適当、雰囲気が近かったり、後は日頃から親しくしとったり、後は常識人やったり、やな、やから穂波も怖がらんと早坂先生辺りに教えて貰いや』

『は、早坂先生?うーん…』

『早坂先生優しいで、今まで何人も相手してきとるベテランやしな、橘さんは?』

『橘さんはちょっと怖いかな』

『まぁ、うちが決める訳ちゃうからな、互いに交渉したり相談して決めるからなぁ』

敦子さんは煙草を灰皿に捩じ込みながニヤリとする。

『すまんなにぃちゃん、仕事やわ』

途端言いながらマルボロメンソールを唇に咥えスナックマーメイドの陳腐な安物のライターで火を付け思い切り吸い込む敦子さん。
時計を気にしている。
ひょっとしたら煙草休憩だったのかも知れ無い。

『ともかく大人が餓鬼にセックス教えのが赤神様やわ』
 
つっけんどんに答えてから『ああ、レジの仕事あるけんまたな』と足早に立ち去って行った。
取り残された僕と穂波さん。
穂波さんはモジモジしていた。

『大丈夫?』

『大丈夫やから、来月頑張るけん』
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