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人魚島
第6章 早坂先生と恋人美沙
翌朝酷い寝汗で飛び起きた。
あれは夢だったのだろうか?
嫌な予感がズキンズキンしていた。
あれ程夜中に射精したにも関わらず立派に朝勃ちしているのだから僕の繁殖能力は凄まじい。
朝勃ちを抑え付けながら居間に行けば花子が早速掃除機を掛けていた。
気恥ずかしいがとりあえず『おはよう』とはにかめば、花子は案外ケロッとしていて反して『おはよう』と笑うだけだ。
次第に明さんと三咲さんがやって来る。
宗一さんと静枝さんは庭の手入れに早朝から出掛け、橘さんはやはりバツが悪いのか借りているアパートに戻っている様だ。
咲子はまだ寝ているのか姿が見え無い。
『食パンにマーガリン塗って目玉焼き乗せて焼くけん、塩胡椒いる?』と花子が笑う。
僕は『ケチャップある?』と笑う。
『あるけん、ちょっと待って』と台所に消える花子は郁子さんに似て働き者だ。
一方で咲子は全く家事を手伝わず惰眠している。
ウンザリした。
『咲子起こしてくるけん』と煙草を燻らせながらスウェット姿の寝癖の三咲さんが立ち上がる。
しばらくして食パンの温まる香ばしい香りに釣られ寝ぼけ眼の咲子がやって来た。
そして珈琲やら紅茶片手に食パンを食べた。
明さん、三咲さん、花子は珈琲、しかもブラック。
僕と咲子は砂糖入りのミルクティーだ。

『今日美沙さん渡島じゃね?』

不意に三咲さんがカレンダーを見上げた。
7月26日、晴天。
そうだ、今日は麦茶さんこと美沙さんが渡島する日だ。

『早坂先生んとこ行くなら、庭で南瓜とカボス採れたけん持ってって?』

三咲さんが玄関先にビニール袋に入った黒く実った大振りの南瓜と青々としたカボスを見せて来た。
『着替えて来るけん、ハルキ待っててや?』咲子が笑いながら言うので仕方無く彼女の身支度を待つ。
しばらくして着替えた白いワンピース姿の咲子がやって来て『橘おらんけん、勝手に原付使お』とニヤニヤする。
原付に股がり魚沼家から離れる頃には朝の9時過ぎだった。
軽い乾いたエンジン音を鳴らしながら快適に坂道を下る原付。
しばらくして早坂クリニックが見えてきた。
軒先に原付を停めて中の様子を伺えば"休診"と書かれたプレートがポスト付近にぶら下がっていた。
早坂先生居無いのかな?と二人で裏手に回れば白いYシャツに黒いスラックス姿の早坂先生が何やら物凄い絶世の美女と煙草を燻らせながら珈琲を飲んでいた。
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