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人魚島
第7章 大神魚人再来
ウオトの指先が僕の背中に僅かに触れた、何故だか目眩の様な嫌な感覚が襲い、僕は『うッ』とクラクラしながら思わず前屈みになる。
タイルの壁に両手を付きながらハァハァとした。

『大丈夫?』

ウオトが僕の前に回り込み様子を伺って来る。

『湯船にとりあえず浸からずに、もう出なさい、熱かったけん目眩したんよ』

ウオトに言われて僕は泡を洗い流して洗面所で身体を拭いスウェットのパジャマに着替えた。
ウオトは『後15分位風呂場借りるよ』と笑う。
あれは一体なんだったのか、ウオトに触れられ僕は目眩を起こしたが今はピンピンしている。
少し今日は疲れたのかも知れ無い。
早めに寝ようかな。
居間では花子と三咲さんが片付けし、皆に味噌汁を振る舞っていた。
僕もその輪に加わり味噌汁を頂く。

『美味しい?ウオトからもろた昆布入りやで?』

花子が食器類を手際良く回収しなから笑う。

『うん、美味いよ』

『関東の人からしたら薄味かも知れんけど、具材タップリやけん、食べてな?』

『うん、ありがとう』

僕が味噌汁を半分食べた頃、ウオトが浴室からやって来た。
花子があつらえたのか甚平姿だ。

『良い湯やったよ、花子』

ニッコリ微笑みながら花子の隣に正座する。

『魚人くん、今日泊まってく?』

三咲さんがピアニシモも燻らせながら『客室空いてるよ』と笑う。

『良いんですか?邪魔になりませんか?』

『邪魔に?アホたれ、久しぶりやねんから、甘えときなさいや』

『解りました、じゃあ客室お借りします、ああ、慎三曾祖父様亡くなったんですね、線香やっても良いですか?』

『構わんよ』

三咲さんがマッチを擦り、使いさしの古い蝋燭に火を灯した。

『曾祖父様…ウオトです。お久しぶりですね、僕ですか?はい、元気にやってますけん』

ニコニコ穏やかに仏壇に向かって手を合わせながら語るウオト。
僕は慎三曾祖父さんにそんな気の効いた言葉は生憎出ない。
ウオトが線香を一本炎に近寄らせれば青雲会社の線香の香りが辺り一面に香った。
鈴を鳴らすウオト。

『じゃあ曾祖父様、また明日』

ウオトがゆっくり手をかざし蝋燭の炎をはたいて消しゆっくりこちらに向き直り『手土産も無くてすみません』と詫びる。
『難破した海からダイブしたけん、土産もビショビショやろ?』と笑う花子。
皆も『気にするな』と言った雰囲気だ。
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