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人魚島
第7章 大神魚人再来
『流石早坂だね』

『蓮ちゃんの分も水筒に入れて作ったから帰り忘れず持って帰ってね、しかし、相変わらず三咲ちゃんと明さんラブラブだったなぁ』

『………』

押し黙る橘さんに続ける早坂先生。

『こうなんかね、明さんの隣に居る三咲ちゃんってグッとまた一段と綺麗になるよね、そそるよ、あれは』

『なぁ、先生』

『何?』

『俺はもう三咲諦めた方がええんかな?』

赤丸を灰皿に捩じ込み、新たに咥え、スナックマーメイドのライターで先端に火を付ける橘さん。

『どうしたのさ、急に』

『いや、なんか俺急に思った訳よ、明さんには絶対太刀打ち出来ねぇなぁってよ』

『まぁ、君側室みたいなもんだからね』

『それがやなんだよ、俺は三咲に惚れてる…堪んねぇ女だよ、なんなら明さんが事故で海で亡くなって欲しい位だ、口には出せねぇけどよ』

『縁起でも無い事朝から言わ無いでよ』

『あん?だからよ、俺の腹ん中は禍々しいもんしかねぇ』

その言葉にしばらく早坂先生は黙って考えている様だった。
そして不意にマルボロを取り出しながらゆっくり呟いた。

『蓮ちゃんは?』

『ん?』

橘さんが小首を傾げる。

『蓮ちゃんの身請け人になれば丸く納まら無いかな?』

『まさか、馬鹿馬鹿しい』

『何故?』

『俺は蓮に惚れちゃいねぇし、あいつだって西村ナースとか言う見えねぇ亡霊に取り憑かれてるだけに過ぎねぇよ、それに何万って男に抱かれた女嫁に貰いたくねぇよ』

『ハハハ…傲慢だね、いつも蓮ちゃん言うよ?『西村ナースじゃ無くて橘孝が好き』だってね、本気なんだよ』

カボスジュースを傾け、チェイサーでお代わりしながら早坂先生は続けた。

『橘さんは30歳、蓮ちゃんは28度、お似合いだと思うけどな、賭けても良いよ?三咲ちゃんと明さんは離婚し無いよ、二人は深く互いを想い合ってる』

『酷やな、先生』

『友人としてのアドバイスだよ』

『親友の間違いじゃ無いの?』

『ハハハ…君がそう思ってくれるなら今日から親友だな、なぁ、橘さん、考え直してみたら?』

『やだよ、俺には三咲が居るもん』

『絶対辛くなるだけだよ?蓮ちゃん連れて東京辺りでゆっくり二人で島の生活や人間忘れて暮らしなよ?東京なら俺顔聞くよ?賃貸紹介するよ?』

『へッ、やなこった。東京?生憎俺はあんなゴミゴミした街嫌なんだよな』
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