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人魚島
第2章 人魚島
『ハルくん』

暗闇の中、ヌラヌラ濡れた表面が街路樹に隠れた街頭を反射させ不気味に輝いていた。
それにビクッとしながら『何?』と振り返る。
可憐な声色が逆に不気味に聞こえた。

『少し話しよ?話す暇無くてハルくんとお話してみたいなぁって思ったから』

花子が笑う、背丈は148㎝程度小柄で小さく腕の中にスッポリ収まりそうだ。
痩せ型で咲子みたいに健康的みたいにムチムチしてい無い。
恐らく推定AAカップだ。
咲子の豊かな乳房とは相反するスタイルだ。
手足もガリガリで骨が浮いている。

『趣味は何なの?』

『え?』

『趣味』

『マウンテンバイクとベースだよ?』

『ベース弾けるのッ?』

花子がニヤァッとする。
ガチャガチャの歯並びが不気味に光る。
まるでさながら鮫の歯の様に見えた。

『私今年の夏の祭でバンド組んだよ?』

『へぇ?何担当?』

『ボーカル、楽器はキーボードだよ』

キーボード?
今僕のバンドで一番欲しい人材だ。
マキシマムザホルモンのコピーバンドなのだ。
女の子のキーボードが欲しかったのだ。
今は男のキーボードがキーボードを担当している。

『歌ったんだ』

『何歌ったの?』

『ZARDの揺れる想いだよ』

『へぇ、そりゃ凄いな、今度歌ってよ』

僕が頼めば花子が『良いよ』と微笑む。
花子の歌声か、楽しみだなぁ。
感心していると咲子がズンズンとやって来て僕の二の腕を掴み『アンタはあたしと歩くのッ!』となんと恋人繋ぎして来る。
咲子は肩を怒り肩にしながらハァハァハァと深呼吸しズンズン歩いて行く。

『あいつにボーカルの座を奪われたのッ!あいつよりうちの方がピアノ上手いけんッ!』

『落ち着きなよ』

『やかましなぁッ!あ…ああッ!』

泣き崩れしゃがみこむ咲子。
そんな咲子の背中を撫でながら『お姉ちゃんどうしたの?』と咲子の顔色を伺う花子。
『触るなッ!化け物ッ!』花子の手を必死に振りほどく咲子。

『あんたなんか生まれなきゃ良かったッ!』

『お姉ちゃん…』

『口訊くなッ!化け物ッ!』

咲子は僕の手をギュッとしたまま公民館に駆け出して行く。
花子は悲しそうに立ち尽くしていた。

『咲子、落ち着きなよ』

『ひぐッ…えッぐ…ひッく…』

泣きじゃくる咲子に触れられ無い僕。
咲子が不意に僕の胸元に頬を寄せ頬擦りした。

『さ、咲子?』
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