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人魚島
第10章 東京編
花子が鼻から軽く息を抜きながら伸びをした。
そしてゆっくり続ける。

『売春婦のうちが、いや、あんな田舎の島民のうちがハルくんと幸せ掴めるなんて、夢物語や、ましてや結婚、ましてや妊娠、ましてや出産…幸せが立て続けや。神様はうちに売春婦やっとった罰としてあたしをHIVウイルスに感染させたんや』

『花子…それ以上今は何も言うな』

『ハルくん、ごめんなさい…行こうか』

『うん』

花子は泣いてい無かったし動揺も見せてい無かった。
二人で手を繋ぎながら内科に向かう。
不意に産婦人科の目の前を通る時、多分妊娠10ヶ月位の若い妊婦が待合室に待っていて、花子が遠目に『良いな…』と呟く。

『何言ってんだよ?花子も生むんだろ?』

『…うん、そうだね』

『エヘヘ』と笑いながら『立ちバック攻撃ッ!』と僕の背後に回り腰をぶつけてくる無邪気な花子に目頭が熱くなる。
内科の待合室、花子は毅然としていた。
真っ直ぐ前を見据えている。

『花子?』

『何?』

『何か食いたい物ある?』

僕の問い掛けにフンワリ笑いながら『築地のお寿司』と告げる花子。

『死ぬ前にたらふく贅沢したいけんな』

『花子は死な無いよ』

『………』

『築地ね、覚えとくよ』

『魚沼さん、篠山さん』

診察室に呼ばれる。
僕は祈った。
どうか誤診でありますようにッ!
しかし医者は冷たく言い放った。

『HIVウイルス陽性反応でした。今日から薬物治療進めて行きましょう。篠山さんは陰性でした。くれぐれもセックスはなるべく控えて必ずコンドームを着けて下さい』

『解りました…』

やはり花子は陽性反応だった。
僕の祈りは天には届か無かった。

『まずはドルテグラビルとドルテグラビルナトリウムとアタザナビルとマラビロクで様子見ましょうか。後は梅毒ですが、これもクラビットとジスロマック出しておきます。跡も残ら無いでしょう』

『来週からは腹の子供の為の治療も始まるんですよね?』

『その予定です』

『あ、あの…』

花子が口を挟む。

『はい、なんですか?魚沼さん』

『赤ちゃんなんですが…ちょっと考えても良いですか?』

『はい、構いませんよ』

『花子?適切な治療受ければ子供も花子だって助かるんだよ?』

『解ってる』

『なら何故?』

『母親がHIVなんて知ったら子供が可哀想や』

『花子…』
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