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人魚島
第10章 東京編
『ボク達神は何もしてやれ無いけれど、応援はしているよ』

タマヨリヒメがリシャールを呷りながら続けた。

『神は奉納がある限り消滅し無いけれど、人間は80年、90年足らずで魂が入れ替わる、悲しい性だね』

『…花子は死ぬのかな?』

『これでよし』

アマテラスが顔を上げた。
スマートホンタブレットを置きながら『だからそうさせ無い為にスクナヒコナに頼むんでしょう?』と僕を見据える。
スクナヒコナノミコト…適切なアドバイスくれるのかな?

『不安になら無くて良いよ、ボクも冬山でスノーボードしてた時にうっかり左足骨折した際にも彼に診て貰ったんだ。なかなかの腕前だったよ』

医者としてはなかなかの腕前らしい。

『今年は忙しくてまだスノーボード行って無いなぁ、アマテラス、来週辺り連休取れ無い?みんなで行こうよ?シンイチ…シンちゃんも連れてさ』

『春は来るの?』

『僕には仕事ありますから』

『シンちゃんに頼めば融通利くでしょ?白馬とか行こうよ?諏訪大社の夫婦知り合いなんだ、もう長い付き合いだよ?タケミナカとヤサカトメノカミ、夫婦なんだ。タケミナカは軍神や狩猟、農耕の神で、風の神でも有名だよ』

『シンイチに相談してみます』

『ねぇ、退屈だわ、何か話なさいよ』

ああ、しまった。
退屈させてしまった。

『仕方無いじゃん、アマテラス、彼は本調子じゃ無いんだから、ボクが話すよ?ボク、子供が4人居るんだ。みんな高天原で父親のウガヤフキアエズが面倒見てるけどね』

『高天原?神の国ですよね?寂しく無いんですか?』

『そりゃ寂しいし、最初は一杯泣いたよ?けど、離婚して長いから仕方無いんだよ』

『離婚?』

『ボクは駄目な主婦だったから、夫であるウガヤフキアエズノミコトは大企業の若い社長だったんだけど、ボクには重過ぎてサポート出来無かったんだ』

タマヨリヒメはリシャールを傾けながら静かに語った。

『子宝には恵まれたなぁ、しかし、笑える話があるんだ』

『何よ?』

アマテラスがニヤニヤする。

『妊娠10ヶ月、姉貴がある日産気付いたんだ。で、海岸で出産してたら姉貴の旦那、ホオリに見られてたんだ』

『なんでそんな場所で出産してたのよ?』

『場所が無かったんだよ、昔だったしね』

『姉貴はもう恥ずかしくて恥ずかしくてさ、すぐさま海の国に帰ったよ』

『アンタ達が悪い』
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