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人魚島
第10章 東京編
中に入り雪を払う。
すぐさまロッカールームでCartierのスーツに着替える。
そしてネクタイをキュッと締めてヴィヴィアンウエストウッドのスニーカーからFerragamoの革靴に履き替える。
そしてギャツビーの整髪剤で髪の毛をオールバックに整える。
そして颯爽とCartierのスーツを靡かせながらVIPルームに入り『当店ドラゴンゴッドからのサービスです』と果物の盛り合わせをプレゼントした。

『わ、良いの?今夜はドラゴンゴッド暇なんでしょ?』

ニヤリとしながら巨峰を摘まむタマヨリヒメ。

『CHANELくれたんだから、良い格好させて下さいよ』

笑う僕に『じゃあ甘えておくよ』と前回下ろしたリシャールの続きを呑み始めるタマヨリヒメ。
可愛い。

『本当だ、店内ガラガラだね』

『徐々に2月に近付く事に暇になるんですよ』

店内は閑散としていてショパンのノクターンもなんだかわびしい。
人気の少ないドラゴンゴッド、なんだか意外だ。
誰も来無いVIPルームでチビチビリシャールを呑んだ。
タマヨリヒメが『燕の巣位下ろした方が良い?』と笑うので『あんな馬鹿高いやつ頼ま無くて良いよ』と制する。

『じゃああたりめ頼むよ』

『あたりめかい?持って来るよ?』

VIPルームから出て厨房の乾き物と書かれた戸棚を開けて中から取り出し皿に並べた。
マヨネーズを添える。
タマヨリヒメの指先が汚れ無い様に箸を添えた。
タマヨリヒメは長く美しいジェルネイルの持ち主だ。

『お待たせしました』

タマヨリヒメにあたりめを運ぶ。

『わ、馬鹿だなぁ、余計に入れて来ただろ?』

『はい、すみません…タマヨリヒメさんが好きなんで沢山入れて来ちゃいました』

『馬鹿』

言いながらも笑いあたりめを摘まむタマヨリヒメ。

『うん、甘しょっぱくて美味しいや』

リシャールが早く無くなら無い様に薄く作る僕に『面目ないなぁ』と力無く笑うタマヨリヒメ。

『リシャールは濃厚な味わいですから、このブルガリアンウォーターとも相性良いんですよ』

『ありがとう春、君は本当に優しいホストだね、感心したよ』

『だから、そんなんじゃ無いですよ』

『いや、君は間違い無くホストに向いているよ』

『まさか』

笑う僕の手を取りながら『騙されたと思って信じてよ』とはにかむタマヨリヒメ。
その横顔はキラキラ美しい。
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