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人魚島
第10章 東京編
ニヤニヤしながらタマヨリヒメはショートホープを燻らせる。
僕は『アハハ…心配で』と笑う。

『当たり前だよ、今日もシンちゃんに頼んで早く帰らせて貰いなよ?』

『そうですね、後で話してみます』

『後でじゃ無くて今話して来なよ?』

僕はニコニコする二人を置いて店の中央に鎮座するグランドピアノでlightdanceを奏でるシンイチに近付いた。
シンイチは珍しく眼鏡を掛けてグランドピアノに向き合っていた。

『シンイチ』

『んだよ?邪魔すんな』

ニヤニヤしながらシンイチが僕を見上げる。
lightdanceは軽やかだった。
爽やかで甘酸っぱい感じがする。
しばらくしてアウトロに差し掛かり、シンイチが目蓋を細めて鍵盤を両手で押さえた。
僕はそんなシンイチの様子を黙ってボンヤリ眺めていた。
静寂がやって来る。
シンイチが床に置いた瓶ビールをらっぱ呑みし、床に置くと続いてフランツ・リストのラカンパネラを奏で始める。
僕は黙って聞き入っていた。
『仕舞いだ』とようやくアウトロを奏でるシンイチ。
今日もCartierのストライプ柄のスーツが似合っている。

『なんか用か?』

ピアノ奏者に席を譲りながらシンイチが眼鏡を外す。

『視力悪いんですか?』

『いんや、なんとなくピアノ弾く時はカッコ付けて掛けるだけの伊達眼鏡や、で?なんや?』

『花子と連絡が付かないんです』

『ほぅ、心配やから早く上がらせろ言うんやな?』

『構いませんか?』

『今夜も暇やからなぁ、しゃあ無いけんな、構わんぞ』

『解りました、ありがとうございます』

『花子心配やな』

『はい、いつもならLINEだってすぐに返事あるんですが…』

『そうか』

『帰ります。イシコリドメとタマヨリヒメには後日穴埋めします』

『文字通り穴埋めしてやりゃ、しばらくはあいつ等大人しくしてるだろ』

『ハハハ…』と笑うシンイチに『お疲れ様でした』と頭を下げてVIPルームに戻りイシコリドメとタマヨリヒメに帰る旨を伝えた。
12時、僕はロッカールームでヴィヴィアンウエストウッドのYシャツに着替えジーンズを履いて雪が降りしきる中、アパートに駆け出した。
途中何度か滑ったが構わず走り続けた。

『花子ッ?ただいまッ!』

勢い良く鍵を開ける。
花子が万年床に横になっていた。
見れば泣いている。
一体どうしたのだろうか?
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