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人魚島
第10章 東京編
『花子』と側に駆け寄るが花子からは反応が無い。
ビリビリに破られた母子手帳、僕は嫌な予感を感じた。
花子が目だけ僕に上げる。
長く濃い睫毛は涙で濡れていた。

『花子、どうしたのさ?』

『赤ちゃん…』

『ん?』

嫌な鼓動が鳴る。

『卸して来た…』

『………』

やはりか。
僕はビリビリに破られた母子手帳を一瞥してから花子にゆっくり『そうなんだ』と告げる。

『赤ちゃんが…おっきなった時にお母さんがHIVやとか可哀想やろ?』

それが花子の出した決断か。

『独りで行ってきたの?』

『うん』

ゆっくり上体を起こし『お腹空いたやろ?なんか作る?』と涙を拭う花子。

『なんで相談しなかったのさ?』

『だって、ハルくんに言ったら怒られるやろ?』

『独りで決めたのか?』

『ミケに電話した』

嗚呼…ミケさんに相談したのか。
僕は激しく項垂れた。

『身体のあちこちが痛いし、クラクラするわ』

『まだ麻酔が抜けて無いんだよ』

見ればたまごクラブやゼクシィ迄もビリビリに破られたいた。
花子の中で何かが終わったのだ。
花子が『ごめん、ハルくん』と涙をポロポロ溢しながら頭を下げた。
僕は花子を抱き寄せて花子の耳元で『泣きたいだけ泣けば良いよ、僕も泣くから』と囁き涙を溢した。
花子を抱き締めながらまるでさながら子供みたいに泣いた。
1時間近く泣いたと思う。
花子は『泣き疲れて、腹ペコだよ』と"空っぽ"になってしまった下腹部を擦った。
『ローソンで美味い焼き鳥買って来るよ』と力無く言う僕に『ブラックデビルと焼酎お願い、呑みたい気分なの』と涙ながらに訴える花子。
僕は仕方無く花子の額に口付けしてからアパートの斜向かいのローソンに向かい、黒霧島と焼き鳥を何本か買い、ブラックデビルも忘れず購入した。
帰宅し、黒霧島を水割りにしてやれば『呑まなきゃやってらん無いよ』と花子が唇を突き出した。
花子は無表情だ。
グラスを傾けながら久しぶりにブラックデビルを燻らせている。
見た左手には婚約指輪が無かった。

『花子、婚約指輪は?』

『しまったよ』

『何故?』

『婚約破棄や』

『なんでだよ?』

『赤ちゃんもうおらんけんな』

『………』

『ハルくんはそれでも結婚考えてくれやんの?』

『………』

『ハルくん?』

『もう僕寝るよ』

花子にいたく幻滅してしまった。
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