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人魚島
第2章 人魚島
『妹はすまんかったな』

咲子が活気に満ちた卸し市場を横切りながら呟いた。
鯵や秋刀魚や鯛が大量に発泡スチロールに収められている。
磯の香り、アワビが卑猥にピクンッとした時僕は重々しく口を開いた。

『ドッキリか悪戯なの?』

『違う』

オレンジ色の縞猫が鯵を咥えてそそくさと横切って行った。
活気に賑わう卸し市場を横切りながら咲子が更に続けた。

『呪いや』

『え?』

途端熱風が吹き荒れ咲子の豊かな髪の毛とスカートを揺らした。

『人魚の呪いや』

『人魚?』

『せや、人魚はホンマにおるんや、伝説ちゃうけん』

見れば咲子はワナワナと唇を尖らせキィと自転車を不意に止めた。

『大丈夫?』

『大丈夫、慣れとる、はよ敦んち行こ』

再び不意に自転車を押す咲子。
咲子の横顔は惚れ惚れする位美しかった。
花子にも顔があれば…あるいは…勘繰ったがそれは妄想に過ぎ無かったが興味は注がれた。

『生まれた時からなの?』

僕の問い掛けに『うん』と頷く咲子。
髪の毛が太陽光を浴びてキラキラ輝いている。
思わず触れたくなったが、手のひらを握り拳にし耐えた。
しかし、花子は生まれ付きあの顔なのだ。

『じゃけぇ、お母さんは花子が生まれた翌年に身を恨んで自殺したんじゃ』

『え?』

衝撃的な告白に狼狽える僕の肩をポンッと叩きながら『冗談じゃ、母ちゃんなら船着き場で酒場やっとる、寄ってくか?』と笑う。

『良いの?』

『寝てるじゃろけど、構わんよ』

笑う咲子、成る程多少は機嫌が良くなったらしい。

『見えてきたぞ、あれが敦んちだ』

"パーラー末次"に隣接した"駄菓子屋遠山"古びた佇まい、埃っぽく塗炭屋根は曲がっていた。

『ばっちゃぁんッ!うちやッ!咲子やッ!』

軒先に自転車を立て掛け咲子が大声を上げた。

『なんや、咲子か』

中から眼鏡の割烹着姿の老婆がやって来るなり『慎三じぃさんは残念やったな』と笑う。

『初めまして、咲子さんの親戚の篠山春樹と言います』

『やぁやぁ、これまたイケメンさんやな、遥々おおきにな、慎三じぃさんも喜ぶやろて…で?かき氷か?ソフトクリームか?』

『ハルキはどっちが良いの?』

不意にハルキと呼ばれドキッとした。
ハルキなんか東京に置いてきた両親か男友達位しか呼ば無い。

『あ、かき氷が良いな』

『じゃあ、うちもかき氷』
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