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人魚島
第4章 咲子の村案内
咲子は苛立っているのかザクザクかき氷を食べて行く。
頭キーンが来なければ良いのだけど…。
不意に咲子の足元にパーラー末次から来たのか三毛猫が寄ってきて咲子の足首にマーキングした。
『苛めるけんね』咲子が猫にシッシッとする。
飽きたのかやがて三毛猫はゆっくり立ち去って行った。
咲子の踝には抜けた三毛猫の毛がくっ付いていた。

『はぁ、頭痛くなって来たけん』

咲子が不意に額を押さえながら溜め息を付いた。

『大丈夫?食べれる?』

『食えるよ』

咲子が再びまたザクザクかき氷を食べて行く。
そしてようやく『はぁ、完食じゃ』とステンレス製のスプーンを器に置いた。

『美味かったな』

『そうだね』

『気にしとらんけん』

『え?』

立ち上がる咲子を見上げる僕に咲子が続けた。

『あたしの方がピアノもエレクトーンも上手いけん』

ああ、ZARDの揺れる想い気にしてるのか。
僕は咲子の髪の毛を一房弄びながら『また聞かせてよ』と笑った。
咲子もようやく笑い僕達は飴玉やチューインガムを頬ばりながら少したむろし原付に股がりガソリンスタンドを目指す事にした。
咲子がフルスロットルにガソリンスタンドを目指す。
海岸沿い、誰も居無い田舎道にひたすらツーストロークのエンジン音が潮騒に乗って聞こえて来る。
しっかり咲子の身体にしがみ付きながら僕は前を見据えていた。
不意に左右に立派なヤシの木が植えられた誰が一体利用するのか解ら無いサイクリングロード付きの公道に出た。

『もう少しで見えて来るけん』

咲子が言う。
しばらく2~3分して見えて来たボロボロの佇まいのガソリンスタンド、壁が剥がれ扱っているのはレギュラーと軽油と灯油だけでハイオクは扱って無いらしい。
咲子が給油機の側に原付を停め『敦おるかッ?』と声を上げる。
誰も従業員も居無い閑散としたガソリンスタンドにたった二人して立ち尽くした。

『敦ッ?』

『なんや?』

坊主頭にキャップを被り、明るい紺色のジャンプスーツ姿の少年がジャッキ片手にフラフラやって来た。
喫煙直後なのか多少煙草臭い。
ラークの香りがした。
何故解ったかと言えばクラブの先輩が吸っていたからだ。

『敦おったんや、おるならはよ接客しぃな』

『アホたれ、ここはセルフやぞ?なぁ、アンタが噂の咲子の恋人なんか?』

鋭い目付きで僕を眺める敦さん。
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