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人魚島
第4章 咲子の村案内
早坂先生が煙草の煙を燻らせながら頷いた。

『すぐさま脚を切り離す切開手術を施したよ、歩行に差し障りは無かったね、あれはそうまるで魚人様、人魚の成れの果てだ、生まれ初めて見たね』

『まさかあんな惨たらしいのが妹やとは思わんかったわ』

『昔はあれだけ仲良くしてたのにね…いつから妹を憎む様になったの?』

早坂先生が灰皿に煙草の吸殻を捩じ込みながら咲子の顔を伺った。

『昔の話は昔の話やけんな、変えれん事実上やけど、あいつばっかりチヤホヤされてけしからん、耐えられへん地獄やまさに…うちの家はあいつが生まれてから崇められ崇拝され奉られて正月には神輿や花火が上がるけん、気味が悪い…なんやあの妄信的な信者共は…人魚伝説なんかお伽噺、言い伝えや、花子は奇形児に過ぎひん』

そう溜め息混じりに捲し立てる咲子の肩は興奮からか上下していた。

『女神様みたいな物だから花子は…その姉なんだから胸を張りなさい』

宥める様に言う早坂先生。
蝉が鳴き喚く中、僕等は無言だった。

『夏休み言っても医者は夏休み取れ無いからね、実家の宮城県の仙台には今年も帰郷出来そうに無いって絵葉書辺り出さなきゃな…ああ、仙台の牛タンが食べたいなぁ』

『今夜は焼き肉やけん、先生も来る?母ちゃんも久しぶりに店早く畳んで待ってるけんな』

『ハハハ…じゃあ三咲ちゃんの好物芋焼酎持って呼ばれようかな』

『先生待ってるけんな、ああ、先生は東京から来て何年になるん?』

咲子がグラスを弄びながら顔を上げた。

『医者になってすぐだったからもう19年かな?24歳で東京の武蔵野で大学病院に半年勤めてナースともめて殴り合いになってそのまま辞めてからもう19年だ…月日が流れるのは早いな』

『先生結婚せんの?』

『彼女っぽいのは奈良県に居たよ』

『プロポーズせんかったん?』

『遠距離だったし、俺には結婚願望あったけど、タイミングが合わなかったんだよ』

『いくつの人?』

『三咲ちゃんと同い年だから今年32歳だね、美人だったよ』

『なんでタイミング合わんかったん?』

『多分セックスレスだったからかな?』

『セックスレス?ヤラんかったん?』

『いや、会えば四六時中ヤッてたけど、専ら夜な夜な彼女が仕事から帰宅してからテレホンセックスに勤しんでたよ』

『先生、テレホンセックスってなぁに?』

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