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人魚島
第4章 咲子の村案内
今迄静かにしていた咲子が唇を尖らせながら訊ねて来た。

『最初当初は男性、それも若い男の子だとばかり思ってたんだけど、ある日なかなか寝付け無くてね寝苦しい6年位前だったかな、ふと思い立って麦茶さんにエブリスタからメッセージ送ってみたら翌朝には既にもう返事が来て手が震えたよ、開けてみれば性別認識は出来なかったね、なんせ彼女敬語だったから』

『え?麦茶さんにメッセージ送ったんですか?そりゃ凄い度胸だなぁ、僕も何度かメッセージ送ろうかと思ったけど…結局接触出来無かったなぁ』

『気さくな人だよ、ああ、後LINEのID迄教えてくれたよ』

『先生、それはまさか…』

『うん、まさかだよ、さっき話した奈良県の女性が麦茶さんだよ』

衝撃的だったが、麦茶さんは奈良県在住、しかも実家は自営業の会社…合点が重なった。

『恋仲になったんだよ、憧れの麦茶さんと。可愛い声の持ち主でね、しきりに『早坂ぁ、早坂ぁ』って電話しまくったよ』

『麦茶さんとエッチしたんだ?』

咲子がニヤニヤしながら脚をブラブラさせた。
仄かにシーブリーズの香りが漂った。

『しまくったよ、気持ち良かったなぁ、なんせ麦茶さんはピチピチの30代、肌も髪の毛もスベスベで抱き心地も最高だったな、何度も何度も40代なのにイッたよ、勿論一緒にイキ果てたよ』

『麦茶って人芸能人に例えたら誰に似てるん?イメージ沸かんけんな』

『ハーフっぽかったからトリンドル玲奈に似てたかな、ちょっとだけね』

『めちゃくちゃ別嬪さんやんか、勿体無いなぁ、なぁ、なんで別れたん?』

『仕方無いじゃん、俺は医者って職業辞められ無いし、美沙…ああ、麦茶さんの本名ね、美沙は実家の稼業継がなきゃならなかったし、互いに忙しかったんだよ、ある日ふと泣きながら電話が来てさ『うち結婚するねん、やから早坂別れて?』って言われて足元が崩れ堕ちたよ、今でも身震いするけどしっかり覚えてる』

『先生、麦茶って人も破局は避けたかったんちゃうん?』

『さぁ、どうかな?またフラッと連絡さえ来たらこの手に抱きたいんだけどね』

『旦那から奪ったったら?』

『不倫か、それもまぁ考えたけど美沙の幸せを崩壊するつもりは更々無いよ』

首を横に振りながら灰皿の中に咥えていた煙草を捩じ込みながら溜め息を吐き出す早坂先生、恋をして麦茶さんに好意を寄せている横顔だ。
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