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人魚島
第4章 咲子の村案内
雨の掛からない塗炭屋根の下、僕達は線香花火に笑った。
不意に咲子が『あの、禅』と切り出した。
『ん?』と顔を上げる禅さん。

『夕方な、このハルキと激しくエッチな事したけん…来月予定してた赤神様は受けんから』

『エッチな事って…まさか、セックスしたんか?』

真顔で目を丸くする禅さんに続ける咲子。

『魚人様の祠でエッチしたけん、きっとハルキには不思議な力が宿った筈や』

『なんや、魚人様の祠でヤッたんか?罰当たりやな』

『なんでや?村長一族はあそこで子作りするけん、じゃし失礼無い様に村長一族の墓にも手ぇ合わせたけん』

『あのなぁ、魚人様の祠に行くんやったら塩か御神酒位捧げろよ?特別魚人様は御神酒が好きやねん、知っとるやろ?』

『ねぇ、咲子』

僕は二人の会話に水を指した。

『魚人様の祠でセックスしたらどうして僕にだけ不思議な力が宿るの?咲子には宿ら無いの?』

『魚人様は女神様やけん人間の雄にしか入れ知恵せんのやわ』

『え?けど、魚人様は男神様じゃ無いの?花子は"嫁入り"するんでしょ?』

『フタナリって解るか?』

禅さんがニヤリとしながら僕の顔を覗き込んで来た。

『フタナリ?』

僕は小首を傾げた。

『ギリシャ神話にあるけん、ヘルメースとアフロディーテの息子にヘルマプロディートスって男神様がおるんやけどサルマキスって神様に強姦されて両性具有者になるんや』

『それが魚人様とどう関係があるの?』

『魚人様の場合は龍神様に強姦されそうになった時に男根持った醜男に身を変身させて、それからは龍神様に狙われん様に男根を持つ両性具有の女神様として、ここ人魚島に君臨するねん、やから魚人様は女神様やけど同時に男神様でもあるねん、ぺニスがあるからな』

『ふぅん、でもさ魚人様は本当に居るの?』

『無神論者かお前、魚人様は必ず居る。俺達を海から見守ってくれとる、じゃし、俺達は魚人様に命を救われた経験があるッ』

『はぁ、どう言う事?』

『去年咲子が海で海水飲んで溺れたんや』

『えぇッ?』

『浜辺で心肺蘇生や人工呼吸したわ、たまたま早坂先生が学会で呉市に出掛けとったけん、俺と敦の三人やった。ビーチバレーして遊んでたら不意に潮風でビーチボールが流されてな、追い掛けた咲子が海で溺れたんや、んでどんどん冷たなってく咲子にオロオロしてたら救世主が来たんや』
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