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偶然が運命にかわるとき
第5章 私が知らなかった彼

「腕、痛かったよな…ごめん…」
そう言って神谷さんは
右手を頭に添え、左手は腰元に添えて
私を優しく優しく包んだ。
予想外すぎるその行動に私は
ただ立ち尽くした。
その時間は10秒くらいだったはずなのに
とても長く感じた。
身体をゆっくり離した神谷さんは
「あいつ俺達が店に入った時から
ずっとお前を見てた。
だから忠告しておいたのにお前ってやつは…
無防備すぎるんだよ!」
と少し声を荒らげた。
状況をなかなか読み込めない私は
とりあえずで謝るしかなかった。
「ご…ごめんなさい…私…」
そう言って神谷さんの顔を見ると
「手、見せてみろ。」
そう言ってさっき強く掴んだ手首をみた。
そこは少し赤くなっていた。
「痛むか?」
痛みなんか一つも感じなかった。
西川と言う男に捕まれた時は
痛みを感じたはずなのに…
その時になって初めて神谷さんが
来てくれなかったら自分が
どうなっていたのか考えた。
怖くなって気づいた時は我を忘れて
神谷さんに抱きついていた。

