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偶然が運命にかわるとき
第5章 私が知らなかった彼


神谷さんはもう1度私をそっと包んだ。



「もう大丈夫だから。」



赤ちゃんをあやすように背中を

トントンしたりさすったりしてくれる。


時間が止まればいいのにとさえ思うほど

とても温かく幸せな時間だった。



「1度俺は戻る。お前はここにいろ。」



と言って神谷さんが身体を離した。


私は離れたくなかった。


それをわかっているかのように

手を触れれる限り触れながら

神谷さんは1度席に戻っていった。




その場所はトイレのある場所からは

見えないけれど

きっと他のみんなはまだまだ

盛り上がっているところだろう。





10分と経たないうちに

神谷さんは戻ってきた。

手には私のコートと手荷物も持っていた。



「行くぞ。」



「えっ…!どこに…?」




そう聞いても神谷さんは何も言わず

前を歩き出した。






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