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偶然が運命にかわるとき
第1章 はじまり

もう何冊目になるかわからない中の
スケッチブックだったがそれももう終わりの方まで
書き溜めていたので最後まで目を通すには
少し時間がかかった。
私の描いた絵やデザインに興味があるから
こんなにじっくり見てくれているのか…
それともなんだこんなデザインしか出来ないのかと
呆れ目を通すのが遅くなってしまっているのか…
神谷さんがスケッチブックを眺めている時間は
私には幸せな時間でもあり窮屈な時間だった。
最後のデザインに目を通し、神谷さんは
”うん、いい”
と口にした。
顔にも声にも出さないようにしたが
心臓が飛び出るほど嬉しい一言だった。
でもその後その喜びを覆す言葉が返ってきた。
”でもまだ未熟だ。足りない。”
私は少し言葉に詰まり戸惑いながら
勢いよく立ち上がり
”何が足りなかったですか!?
足りないものは描き足します!
教えてください!”
そう言うと
”落ち着け、何も悪いと言ってるわけじゃない。”
と言って肩に手を置かれなだめられた。
引き続き言葉を続ける。
”何が足りないか、それに気づけないことが
この業界では1番の欠点になる。”
その言葉を聞きさっき自分が焦りながら発言した
何が足りないかと言う質問が恥ずかしく感じた。
”うちでバイトしてみるか?
もちろん最初から描けるわけじゃない。
雑用からだ。”
答えはすぐに出た。
”お願いします!何でもします!
勉強させて下さい!”
気付けばまた立ち上がり身を乗り出していた。
神谷さんはニコッと笑って
”明日事務所来れるか?”
”学校が終わってからでも良ければ
行けます”
”じゃあ明日。”
と席を立ち私のお会計まで済ませてくれた
神谷さんは去っていった。

