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ロリちゃん作品集 (一章読み切り式)
第28章  現実



 由麻菜が来てから1週間。勿論連絡は無い。
 アイドルに戻る事を、決意したんだろう。セックスを強要すれば、週刊誌に話すとでも脅したんだろうか。
 俺はいつもの支度をして、黒いシミに入ろうとした。
 その時、メールの着信音。
 会社から、休日出勤して欲しいとの連絡だった。
 仕方ない。ロリちゃんはまた明日にするか。
 俺は、急な休日出勤にも快く応えるしかない平社員。
 会社用の鞄に財布を移してから出ようとすると、またメールの着信音。会社から、急げという事だろうか。部署のパソコンに、問題が起きたのかもしれない。パソコンには詳しいから、そんな時だけ俺が重宝される。
 見ると、メールは由麻菜から。驚いて、その場にしゃがみ込んだ。
 たった1行。
 『すぐテレビ見て!』
 収録放送だが、昨夜も由麻菜はテレビに出ていた。13歳じゃ遅くまで働けないから、由麻菜がテレビ出演するのは、昼間か夜は収録放送になる。
 取り敢えずテレビを点け、あちこち替えてエンジェルにいる由麻菜を見つけた。
 生放送らしい。画面の右上に、LIVEとある。
 最新の曲を唄い終えると、中ほどにいた由麻菜がセンターのマイクを奪いアップになった。
「瀬戸由麻菜はぁ、この曲が、卒業公演でぇ、エンジェルを卒業しますっ!」
 メンバーや他の出演者も、驚きの表情。司会者が駆け寄り、本当かと訊いている。
「好きな人が出来たからぁ、卒業しますぅ。お兄ちゃんっ、今から行くねぇっ!」
 それだけ言うと、呆気に取られたみんなを残し、由麻菜は奥へ行ってしまった。
「えーーーーっ!?」
 俺だって驚きで、それ以上の言葉が出ない。
 お兄ちゃんというのは、本当に俺の事だろうか。
 だがすぐ会社に連絡して、体調不良で出勤出来ない旨を伝えた。
 普段着に着替え、居間に座る。
 卒業を宣言してから、1時間。
 お兄ちゃんというのは、俺の事ではないのだろう。あまりにも突然で、俺も混乱してしまった。よく考えれば、由麻菜から見てお兄ちゃんはたくさんいるだろう。期待した俺がバカだった。
 それでも、その場から動けない。もしかしてという0.1%の期待が、消えてくれないまま。
 2時間程して鳴った玄関チャイムに、急いでドアを開けた。


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