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ロリちゃん作品集 (一章読み切り式)
第28章 現実
帰りは、由麻菜と抱き合ったまま部屋に戻る。
「あっ、ホントだぁ。おんなじ時間―」
部屋の時計を見た由麻菜が、驚きとガッカリの混じった声を上げた。
外では相変わらず、取材陣の声や音がしている。
「お兄ちゃん……?」
何気に黒いシミを見ていた俺に、由麻菜がくっついてきた。
「シミが……」
「えっ?」
シミが、少しだけ小さくなった気がする。
「ん? どうしたのぉ?」
「今まで、もう少し大きかったんだ……。地震の後に出来て……」
「地震?」
由麻菜に、シミが出来た経緯を話してみる。だが、首を傾げるばかり。通っていた俺でさえ理由が解らないのに、由麻菜に知る由もない。
「あの世界ならぁ、堂々と、デート出来るねぇ」
それはそうだが、シミが小さくなったようなのは気になる。
「そう言えば、卒業とか俺の事、ご両親に話してあるの?」
「うんっ。パパとママはねぇ。いっつも、由麻菜のぉ、やりたいようにしなさいって、言ってくれるのぉ。だからぁ、アイドルになる時も、反対されなかったぁ」
寛大なご両親には感謝だが、そうとばかりも思っていられない。
まずは、マスコミ対策。
俺は一般人だから我慢すればいいとしても、由麻菜にはつらい取材攻勢があるかもしれない。まだ、義務教育の身でもある。学校に通わなければならないはずだ。
セックスについては、あの世界でヤる方が、罪悪感が無い。現実世界だと、つい淫行罪という言葉が頭を過るから。同じなんだが。
とにかく、13歳の女のコにとって厳しい現実かもしれない。
「お兄ちゃん?」
考え込んでしまった顔を覗き込まれ、笑顔を作ってから居間へ行き座った。
居間の方が、まだ表通りから離れている。そのお蔭で、報道陣の声が届きづらい。
向かい合ってテーブルに着いたが、何から話せばいいのか解らない。
「お兄ちゃん。心配しないでぇ。由麻菜ぁ、ちゃんと、記者会見やるからぁ」
「記者会見?」
「卒業してぇ、普通の子に戻るってぇ。好きな人はいるけどぉ、一般人だからぁ、内緒ってぇ」
由麻菜なら、確かに記者会見にも慣れている。だが今回は、エンジェルについてじゃない。卒業理由に言った、好きな人の事をしつこく訊かれるはずだ。