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ロリちゃん作品集 (一章読み切り式)
第28章 現実
心配だが、俺の出る幕じゃない。
「あっちでぇ、いっぱい一緒にいられたからぁ、今日は、もう帰るねぇ」
「帰るって言っても……」
一歩マンションの敷地を出れば、報道陣でもみくちゃになるだろう。
「タクシー、呼んでくれるぅ? マンションの入口にぃ、着けてって言ってぇ?」
確かに、ずっとここにいるわけにもいかない。
スマホでタクシーを呼び、その会社名を登録しておいた。これから暫くは、必要になるだろう。
数日経った、由麻菜の記者会見の日。俺は有休を使って会社を休んだ。テレビ越しだが、由麻菜を応援したかったから。
あの日はタクシーがピッタリとエントランス前に停めてくれたお陰で、由麻菜は無事に乗り込む事が出来たとメールがあった。「記者会見でぇ、話しますぅ!」という声は、寝室の窓越しに何度も聞こえたが。
俺は、いつも知らん顔で出社していた。記者に詰め寄られる事もあったが、知らぬ存ぜぬで隠し通し。「アイドルには興味が無い」とも言ってしまった。
由麻菜に悪いとは思ったが、何より記者会見が先だ。
人気アイドルの突然の引退という事で、各局同時に午後のワイドショーで中継が始まる。
一通りプロデューサーからの説明が終わると、由麻菜への質問が飛び交う。
「瀬戸さんはまだ13歳ですが、お相手は成人男性ですか?」
「そうですぅ。お兄ちゃんって、呼んでますぅ」
「13歳なら、淫行行為に当たるんじゃないですか?」
その質問に、ドキリとした。
「お兄ちゃんとはぁ、手をつなぐだけですぅ。由麻菜が13歳だからぁ、それ以上はぁ、もっと大人になってからだってぇ」
上手く切り抜けてくれたのはいいが、平然と嘘をつけるのも問題かもしれない。
「ご結婚を考えての、お付き合いなんですか?」
「えーとぉ。まだ13歳だからぁ、由麻菜ぁ、よく解りませんー」
「ご両親には、紹介されたんですか?」
そう言えば、それも必要だろう。由麻菜は未成年なんだから。
「あるマンションへ行きましたよね?」
「そちらに住んでる方ですか?」
「いくつくらいの方ですか?」
何を訊かれても由麻菜はごまかしながら、笑顔で上手く切り抜けてしまった。