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愛されたいから…
第7章 南郷の自宅
そんな大地よりも俺の心はもう南郷さんの事でいっぱいだった。南郷さんの指定した駅に着いた俺は飛び出すように電車を降りて改札口に向かいながら南郷さんに電話をかける。

『はい。』

そう電話に出た南郷さんに浮かれて俺は

『今着きました。』

と言っていた。南郷さんは

『10分ほどで迎えに行くから、南口の本屋の前にでも居てくれるか?』

と言ってくれる。俺は

『待ってます。』

とワクワクとしながら南郷さんを本屋の前で待ってしまう。早く…、早く貴方に逢いたいんだ…。そんな落ち着かない気持ちで俺はただ南郷さんを待っていた。

『待ったか?』

と俺の好きな声が俺の後ろからしただけで俺の顔が勝手に緩んで馬鹿な顔に俺はなってしまう。

『充分、早かったですよ。』

そう言った俺の荷物を南郷さんが持ってくれる。いつもなら、そんな風に女の子みたいに扱われると俺は凹んでしまうのに、南郷さんになら俺は大事にされてるんだと思って嬉しく感じてしまう。

もし俺が本当に女の子なら南郷さんと今すぐ手を繋いで歩いたりとか出来るのに…

大地が言っていた辛い恋の意味するところがやっと実感として俺に湧いて来る。だって俺は男だから、南郷さんにそういう気持ち悪い思いとかは絶対にさせたくなかった。

駅から5分以上歩くと少し洒落た住宅街になって、賃貸にしてはお洒落なマンションが見えて来た。そのマンションの5階が南郷さんの部屋だった。

『先生の家に比べたら狭くて汚いけど…、どうぞ。』

と南郷さんが玄関を俺に為に開けてくれる。玄関に入るなり、俺は南郷さんに飛びついてキスをしていた。俺は俺から南郷さんにキスがしたかった。

南郷さんに俺がどれだけ会いたかったか、不器用な俺が言葉で伝えるよりもキスの方がわかって貰えると思っていた。俺からキスをしたはずなのに、まるで南郷さんが俺にキスを求めていたようにゆっくりと俺の腰を抱いて俺の舌に舌を絡ませて来ていた。

あぁ…、やっぱりこの人じゃないと俺は嫌なんだ。

南郷さんに熱いキスをされながら、そんな思いが俺の中にこみ上げていた。

少しキスが離れて南郷さんが

『いきなり、その気にさせて来るか?』

と言って来る。俺は

『会いたかったから…。』

と素直に気持ちを伝えていた。
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