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喝采
第4章 ヨハネ受難曲
 斉賀に連れて行かれたのは、小さなフレンチレストランだった。一軒家風の店構えで、表札に店名が書かれていたものの、知らない人間はレストランだとはまず気づかないだろう。

 席に着くやいなや、斉賀は慣れた様子で店員に注文した。谷田部の分も斉賀が問答無用で同じコース料理を注文してしまう。強引な斉賀はここでも強引だった。

「明日本番だというのに、ものすごいこってり系ですね」

 斉賀が頼んだコース料理のメインは、牛フィレ肉のロッシーニ風だった。牛フィレ肉のステーキにソテーしたフォアグラを乗せ、トリュフの入ったソースをかけた料理だ。ちなみにこの料理は「ロッシーニ風」というところからわかるとおり、オペラ作曲家として有名なロッシーニが考案したとされる。ロッシーニは作曲家としてだけでなく食通としても有名だった。さすがにとても美味しいが、あとで胸焼けしそうだ。

「ウン。本番だからだよ。美味しいものを食べてたっぷり精をつけないと、二時間なんて振れないもんね。谷田部っちもエヴァンゲリストなんだから精をつけて頑張らなきゃ」
「はい、頑張ります」

 指揮者はハードな職業だ。公演中ずっと立ったままあちこちに指示を飛ばしながら腕を振り続けるため、肉体的にも精神的にも負担が大きい。精をつけるという斉賀の言葉は谷田部にも理解できた。

「そういえば今日の玲音は少し様子がおかしかったんですが、斉賀さんは何かご存じですか?」

 歌う曲の内容によって歌う者の精神が影響を受けることはないわけではない。だがいくら今回の演目が受難曲とはいえ、普通ならあそこまで曲に引きずられることはあまりない。雫石のような沈着冷静なタイプならなおさらだ。雫石と親しい斉賀なら、事情を知っているかもしれない。
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