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喝采
第4章 ヨハネ受難曲
「玲音は苦しんでる。長い長い間ずっと苦しんできた。僕は玲音の力になりたいけれど、僕の力だけでは玲音を救うには足りないんだ。だから谷田部っちの助けが欲しい」
「僕でよければ。……斉賀さんはかなり昔からの知り合いなんですね」
「玲音が生まれたときから知ってるよ。フフフ。あのちっちゃな玲音が、まさか僕と一緒にステージに立つようになるとは思っても見なかったけどねえ」
それはまた随分と長い付き合いだ。
「日本に連れて来たのも僕だ。これ以上ウィーンにとどまっていては玲音のためにならないと思ったから。そしてそれは正解だった。こうして谷田部っちにも会えたしね」
「買いかぶりすぎです」
「そんなことはないよ。自分で言うのもなんだけど、僕の人を見る目は確かなんだ。だから玲音が谷田部っちに出会えたことはとってもラッキーなことだって断言する」
「そうだといいんですけど」
谷田部が照れくさそうに笑うと、斉賀はうなずいた。
「玲音は音楽に関しては正真正銘の天才だ。声楽だけでなくピアノとヴァイオリンはプロとしても十分やっていけるレベルだ。今度機会があったら聴いてみるといい」
「聴いてみたいのは山々ですが、そうホイホイと弾いてくれるとは思えません」
「アハハ。だよねえ」
斉賀が立ち上がったのを見て、谷田部も立ち上がった。
「じゃあね。付き合ってくれてアリガト。また明日ホールでね」
「こちらこそごちそうさまでした」
ド派手なカーディガンをひらめかせた斉賀と別れ、谷田部も家路についた。
「僕でよければ。……斉賀さんはかなり昔からの知り合いなんですね」
「玲音が生まれたときから知ってるよ。フフフ。あのちっちゃな玲音が、まさか僕と一緒にステージに立つようになるとは思っても見なかったけどねえ」
それはまた随分と長い付き合いだ。
「日本に連れて来たのも僕だ。これ以上ウィーンにとどまっていては玲音のためにならないと思ったから。そしてそれは正解だった。こうして谷田部っちにも会えたしね」
「買いかぶりすぎです」
「そんなことはないよ。自分で言うのもなんだけど、僕の人を見る目は確かなんだ。だから玲音が谷田部っちに出会えたことはとってもラッキーなことだって断言する」
「そうだといいんですけど」
谷田部が照れくさそうに笑うと、斉賀はうなずいた。
「玲音は音楽に関しては正真正銘の天才だ。声楽だけでなくピアノとヴァイオリンはプロとしても十分やっていけるレベルだ。今度機会があったら聴いてみるといい」
「聴いてみたいのは山々ですが、そうホイホイと弾いてくれるとは思えません」
「アハハ。だよねえ」
斉賀が立ち上がったのを見て、谷田部も立ち上がった。
「じゃあね。付き合ってくれてアリガト。また明日ホールでね」
「こちらこそごちそうさまでした」
ド派手なカーディガンをひらめかせた斉賀と別れ、谷田部も家路についた。