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喝采
第6章 クリスマスオラトリオ
「やれやれ。本当に堪え性がないんだな」

 雫石は壁から体を離し、バスローブを開いた。体の右側に広範囲にわたって残る醜く引きつれた傷痕と手術痕。事故の詳細はわからないが、かなりの大怪我だったのだろう。

「……これでも僕の体に触れたいと、君は思うのか?」

 そして痛めたのは体だけではなかった。心にも大きな傷を受け、雫石はいまだに苦しみ続けている。

「もちろん」
「……聞かないんだな。僕の体のこと」

 傷痕からすぐに興味なさそうに視線を外した谷田部が意外だったらしく、雫石は首をかしげた。

「どうせ聞いたって、教える気なんかないんだろう」
「ない」
「ほらな」

 雫石はクツクツと笑った。こんなに自然な笑顔もできるのか。今夜は今まで見たこともない雫石のオンパレードだった。

「笑うな!」
「……今は」

 小さく、だがはっきりと呟かれた言葉を、谷田部の耳は拾い上げた。

「今はまだ、話せない」

 雫石はうつむき、歯を食いしばって何かに耐えていた。いつも雫石は何かと戦っているように、谷田部には見えた。

「でもいつか。いつか拓人に僕の話を聞いて欲しい。事故のこと、家族のこと、カウンターテノールに転向した本当の理由も、すべて」
「待ってるよ。俺は玲音が話してくれる日をずっと待ってるから」
「……ありがとう」

 谷田部は雫石に顔を近づけた。雫石は目を閉じて静かに谷田部の唇を受け入れた。

「お前が欲しい」
「いいよ」

 谷田部の腕の中で、雫石は艶然と笑った。
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