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喝采
第6章 クリスマスオラトリオ
 翌朝。窓の外には大粒の雪が激しく舞い踊っていた。眼下に見える風景はすでに一面の銀世界に様変わりしている。

「見ろよ、玲音。雪だぜ、雪!」
「素っ裸で窓から外を覗くなんて、それって完全に変態だと思わないか?」

 昨晩は二人とも睦みあった状態のまま眠ってしまい、全裸で一つのベッドに同衾していた。
 谷田部としては目が覚めてそのまま窓の外を眺めていただけなのだが、雫石には全裸がお気に召さなかったらしい。

「だってさ、興奮しねえ?」
「全然」

 雫石は谷田部を横目にゆっくりとベッドから抜け出し、床に落ちていたバスローブを羽織った。

「……シャワー浴びてくる」

 いまだに全裸のままの谷田部にもバスローブを投げつけ、雫石はバスルームに向かった。

「なあ、延泊しようぜ」

 谷田部は戻ってきた雫石に声をかけた。雫石が投げつけたバスローブは床に転がったままで、谷田部も相変わらず全裸のままベッドに転がっていた。

「どうせ雪でダイヤは乱れ放題だし、この雪の中、大荷物を抱えたお前を帰すのも心配だ。あとはまあ、少しのんびりしたいしな」
「わかった。朝食の時にでも手続きしよう」

 雫石は珍しく素直に同意した。

「よし、そうと決まればもう一戦……」

 この「一戦」が何を意味するのか、全裸で仁王立ちする谷田部のとある部分が雄弁に物語っていた。

「おい! たった今シャワー浴びてきたんだぞ!」
「堅いこというな。また浴びればいいだけじゃねえか」

 抗議する雫石を谷田部は壁際に追い詰めた。壁に両手をつき、退路を絶つ。

「……っ!」
「いいだろ? クリスマスなんだし」
「相変わらず意味不明だな」
「いいんだよ」

 谷田部の腕の中、雫石が谷田部を見上げて小さく呟いた。

「メリークリスマス」

 無表情に呟く雫石が無性におかしくて、谷田部は笑った。

「メリークリスマス」

 今日はクリスマスだった。
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