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喝采
第7章 目覚めよと呼ぶ声あり
 手早く帰り支度を整えた二人はタクシーでウィークリーマンションに向かった。ベッドに雫石を寝かせ、粥でも作ろうとキッチンを探る。何かないかと覗いた冷蔵庫の中には、ミネラルウォーターのペットボトルが数本と、ゼリータイプの栄養補助食品があるだけだった。

「……玲音。食いもんはどこだ」
「冷蔵庫……」
「こんなもん、食いもんのうちに入らねえよ」

 雫石の言う食べ物とはこのゼリーのことだろう。部屋の隅にあるごみ箱には、小さく畳まれたゼリーのチューブしか入っていない。雫石は最低限必要なカロリーさえ摂れれば、食事など何でもいいと考えているに違いない。ここにいる間ずっとこんなずさんな食生活を続けてきたのだとしたら、熱を出すのは当然の結果だった。

「来い」
「……どこに」
「俺んち。こんなところにお前一人で置いておけるか」

 こんなところでこんな食生活をさせておいたら、いつまでたっても熱なんか下がらないに決まっている。雫石は普段几帳面で真面目なくせに、食事に関してはなぜかまったく無関心だった。

「大丈夫、僕はずっと一人だったからこういうことには慣れてる。拓人に風邪をうつすわけにはいかない」
「大丈夫なもんか。こういう時だからこそ、一人より二人がいいんだろ。風邪はうつせば治るっていうし、いっそのこと俺にうつしちまったらどうだ? そうだ! キスすればうつるんじゃねえか?」

 谷田部はふざけ半分に雫石の華奢な体にのし掛かり、強引に顔を近づける。

「僕にさわるな……」
「遠慮するなよ。ほら!」

 だが、雫石は至近距離に近づいてきた谷田部から逃れようと布団を引きかぶった。

「そんなに嫌がるなよ。効果覿面なんだぜ?」
「……拓人はまたすぐにステージが控えているはずだ。風邪なんか引いている場合じゃない」
「風邪くらい別に平気平気」
「平気な訳ないだろう!」

 雫石は勢いよく布団を跳ね上げた。固く冷ややかな瞳を、驚く谷田部に当てる。
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