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喝采
第7章 目覚めよと呼ぶ声あり
「僕たちは歌で身を立てるプロの声楽家なんだ。アマチュアとは訳が違う。体調管理を万全にすることも、僕たちプロの義務であり責任だ。万全でない状態でステージに立つというのは、プロとして非常に恥ずべきことだ」

 口調は至って静かだが、雫石は怒っていた。激怒していると言ってもいい。だが怒るのは当然だった。

「ごめん……俺が悪かった」

『ステージは一期一会。一度として同じステージというものはない。だから一つ一つのステージを大切にしなさい』

 デビューが決まった際に贈られた恩師の言葉。胸の奥深くに刻みつけたはずなのに、デビューして順調にステージを重ねるうち、いつのまにか慢心していた。
 雫石の言葉は、舞台人として一番大事なことを谷田部に思い出させてくれた。

「わかればいいよ」

 激怒していたはずの雫石はあっさり引き下がる。このあたりのあっけなさが、いかにも雫石らしかった。

「……玲音、お前やっぱりすごいな。やっぱりこんなところにお前一人で置いとくわけにはいかねえよ」
「まだわかっていないのか?」
「わかってるよ。でも、俺は玲音が心配なんだ。それに日本では、ナントカは風邪をひかない、って決まってるんだ」
「ああ、なるほど。それなら大丈夫か」
「……おいこら、そこで納得するのかよ!」

 谷田部は再びタクシーを呼び、雫石を自分のマンションへ担ぎ込んだ。コートを剥ぎ取り、早速ベッドに寝かせる。

「何か食えるか?」
「無理」
「ならちょっとだけ待ってろ」
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