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喝采
第10章 我、深き淵より御身に祈る
気づいたのはベッドの上だった。無意識に起き上がろうと体を動かし、全身に激痛が走る。まったく状況が飲み込めないが、絶え間なく襲い来る激痛に耐えるだけで精一杯だった。
雫石がいたのは病院の集中治療室だった。
それからしばらくの間、雫石はぼんやりと夢と現の間を漂っていた。聞けばその間、生と死の間をさまよういわゆる危篤の状態であったらしい。
ようやく危機的状況を脱し朦朧としていた意識がはっきりしたところで一般病棟への移動が許可され、医師が状況を教えてくれた。
コンクールの日から現在まで二週間ほど経っていること。雫石はコンクール当日、会場となっていたホール目の前の道で車に轢かれたこと。そしてそのままかなりの距離を引きずられ、右半身がひどい状態であること。また両足首と腰を骨折しており、粉砕骨折をした右足の方はおそらく後遺症が残るであろうということ。
「……そうですか。わかりました。ありがとうございます」
淡々と答えた雫石に、医師は痛ましそうな顔を向け、病室から去っていった。だが今の雫石には何も考えることができなかった。考えようにも思考が麻痺したかのように、頭が働かない。
あるのは激しい痛みと深い絶望、ただそれだけだった。
雫石がいたのは病院の集中治療室だった。
それからしばらくの間、雫石はぼんやりと夢と現の間を漂っていた。聞けばその間、生と死の間をさまよういわゆる危篤の状態であったらしい。
ようやく危機的状況を脱し朦朧としていた意識がはっきりしたところで一般病棟への移動が許可され、医師が状況を教えてくれた。
コンクールの日から現在まで二週間ほど経っていること。雫石はコンクール当日、会場となっていたホール目の前の道で車に轢かれたこと。そしてそのままかなりの距離を引きずられ、右半身がひどい状態であること。また両足首と腰を骨折しており、粉砕骨折をした右足の方はおそらく後遺症が残るであろうということ。
「……そうですか。わかりました。ありがとうございます」
淡々と答えた雫石に、医師は痛ましそうな顔を向け、病室から去っていった。だが今の雫石には何も考えることができなかった。考えようにも思考が麻痺したかのように、頭が働かない。
あるのは激しい痛みと深い絶望、ただそれだけだった。