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喝采
第10章 我、深き淵より御身に祈る
「斉賀さん? それにペーター?」

 いつの間にか増えた人数に、雫石は驚いたようだった。しかもウィーンにいるはずのシュミットまでいるのだから、驚かないわけがなかった。

「玲音!」

 シュミットは大股でベッドに歩み寄ると、心配そうな表情で雫石を抱き締めた。

「ペーター」

 雫石はシュミットとドイツ語で話し始めた。日常会話止まりの谷田部以外は、全員ドイツ語が堪能だった。難しい単語を斉賀が通訳してくれたお陰で、谷田部にもなんとか会話を理解することができた。

「すみません、ペーター。玲音の怪我は俺のせいなんです。玲音は俺を庇ってくれました」
「それは違う、拓人。僕は望んで君を庇った。だから単純に僕自身のせいだ」

 ペーターは谷田部と雫石、二人の肩を同時に抱き寄せた。

「二人とも自分を責めてはいけないよ。事故は誰のせいでもない。神によって与えられた運命だ。谷田部くんは無事だったし、玲音もこうして生きている。それでいいじゃないか」
「はい」

 シュミットは満足気ににっこり笑って頷き、雫石を見た。

「ステージへの復帰はいつ頃になる? いつウィーンに戻ってくるのか、大体でいいから教えてくれないか」

 雫石は背筋を伸ばし、真摯な口調で話し始めた。

「その件ですが、一年ほどお休みをいただきたいと思っています」
「玲音!?」

 谷田部は驚いて雫石を見た。雫石は谷田部を見て微かに笑った。
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