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喝采
第11章 マタイ受難曲
 翌朝、さすがに雫石は申し訳なさそうに起きてきた。

「すまない。拓人を待っている間に眠ってしまった。しかもベッドまで僕を運んでくれたのだろう?」
「仕方ねえさ。やっぱり疲れてたんだろうぜ。時差もあるしな。一年待ったんだから、お楽しみが一日ぐらい伸びたところで大した違いはねえよ」
「お楽しみ?」
「そ、お楽しみ。……何だよ、笑うなよ」

 雫石はくつくつと肩を震わせている。

「いや、拓人の言い方がおかしくて」
「いいだろ。一年振りなんだから。それより昨日は晩メシ食わないで寝ちまっただろう? 朝メシ作ったから早速食おうぜ」

 テーブルには納豆に焼き鮭、豆腐とワカメの味噌汁にホウレン草のお浸し、とどめに温泉卵という、まるで旅館のような純和風の朝食が並べられていた。

「凄いな、全部拓人が作ったのか?」
「料理は好きなんだ。一人暮らしも長いし。ちなみに今日の晩メシは一昨日から煮込んだ自慢のビーフシチューだ」
「……昨日、食べられなくてすまない」

 谷田部は「一昨日から煮込んだ」と言った。雫石が眠り込んだりしなければ、シチューはおそらく昨日の夕食だったはずだ。

「いいってことよ。逆に、具に味が染みてウマイと思うぜ?」

 谷田部のビーフシチューは、本人が自慢するだけあって絶品だった。ホロホロになるまで煮込まれた肉と大き目に切られた野菜が深い味わいのルーに絶妙にマッチしていた。

「うん、うまい。拓人は声楽家ではなく料理人になるべきだったな」
「じゃあ、引退したら料理屋でも開くか」
「それはいい考えだ」

 久しぶりに二人でとる夕食は楽しいものだった。他愛のない会話に、グラスもすすむ。あまり酒を嗜むことはしない二人だが、今日ばかりはとっておきの赤ワインを楽しんでいた。

 ほどよく酔いが回ったところで、二人はソファーに身を沈めた。
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