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喝采
第11章 マタイ受難曲
「先にシャワーを浴びたいんだが」
「だーめ」
「なぜだ?」
「玲音を待ってる間に俺が寝ちまうから」
「案外酒に弱いんだな」
「まあな」

 酒の強さに体格は関係しない。長身で筋肉質の見た目から酒に強そうに見える谷田部だったが、実は酒にはからきし弱かった。

「……本当にいい顔になったな、玲音」

 一年の時を経て、雫石は大きな変化を見せていた。冷静沈着なところは変わらないが、氷のような冷たさは薄れ、ゆったりとした落ち着きへと変わっていた。

「そうか?」
「ああ。前は不機嫌が服を着て歩いているようだった」
「そんなに酷かったか?」
「抜き身のナイフみたいだった」

 初対面の時の様子を思い浮かべ、軽く笑う。

「今は違うぜ。今はお前から目が離せない。いい一年だったんだな」
「ああ。待たせてすまなかった」
「もう待たねえからな」

 谷田部に押し倒された雫石は、谷田部の体の下から抗議の声をあげた。

「そっちか。せっかちめ」
「いいんだよ。こっちもあっちも、お前は全部俺のものだ」
「……やれやれ。酔っぱらいが」
「何か言ったか?」
「いいや」

 谷田部は服を全て脱ぎ捨てたあと、丸裸で雫石へと襲いかかったのだった。
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