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喝采
第11章 マタイ受難曲
 斉賀一臣率いる「コレギウム・トウキョウ」、バッハ「マタイ受難曲」ゲネラルプローベ当日。

「玲音! 元気だった?」

 ステージに姿を見せた斉賀は、雫石に早足で歩み寄り、思いっきり抱き締めた。

「ご無沙汰しています、斉賀さん。ご心配をお掛けしましたが、僕はこの通り元気です」

 今年の受難節は、昨年に引き続き「マタイ受難曲」を演奏する。今までマタイとヨハネを交互に演奏してきた「コレギウム・トウキョウ」が二年連続してマタイを演ずるのはマタイの人気度の他に、昨年不慮の事故により急遽出演を辞退した雫石のためでもあると、団員たちは理解していた

「ウンウン、よかったねえ。見違えたよ。前よりグッといい男になった」
「まさか」

 柔らかく笑んだ雫石に、オーケストラと合唱のメンバーがわずかにざわめく。一年前まで氷のようだった雫石は、穏やかな落ち着きを見せるようになっていた。

「さて、時間になったし始めよっか。今回ソリストはほとんどみんなお馴染みのメンバーだけど、一応紹介するね。ソプラノ、高橋百合子ちゃん。アルト、雫石玲音くん。テノール、上田孝くん。エヴァンゲリスト、谷田部晴哉くん。バス、治田貴史くん。イエス、大川文也くん」

 「マタイ受難曲」は弦と木管で構成されたオーケストラ二組、通奏低音、四部合唱二組、ソプラノ・リピエーノ、各声部のソリストを必要とする大曲だ。今回斉賀が用意したソリストは六人。エヴァンゲリストとイエスを別に立てた以外は各パート一人ずつの、少数精鋭型だった。

「さあ、いくよ。僕の可愛いミューズたち」

 斉賀は表情を指揮者のものに改めると、腕を振り下ろした。
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