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埋み火
第3章 跳ね火
「そいつとは今も付き合ってるの?」
駐車場に着き、動揺しているのでいつもより慎重に停めると博之は一番気になることを、おずおずと聞いた。
「大事にするって言ってくれたけど、これ以上奥さんのいる人は怖くていやだからもうこれっきりにしたわ。まぁ、また寝るかどうかはひろ次第かな」
「そうかい」
「もしその人が奥さんと別れてくれるなら、真剣につきあおうかしら」
「へえ」
軽口を叩けるほどには霧子も心身ともに回復しているのだろう。
それだけが安心だった。
JRの時間がきたため電話を終え、満員電車を経て会社に着き放心状態からいやでも現実に戻ったところでパソコンからチャットを打つ。
≫きり、ごめんな。
≫うん。
≫さびしかっただろ、ほんとごめん。
≫もういいの。
≫でも、俺にだまって男と会っただろ。浮気したな。
≫しょうがないじゃない。ひろとゆっくり話せる時間がないんだもの。どうせここで何か言っても、仕事してたら返事ももらえないことばっかりだし。
≫そうか、そりゃしょうがないな。
週の頭の、それも朝っぱらからチャットで言い合いもしたくないし、そもそも「浮気」という概念が自分たちの間では狂っていることがよくわかっているので博之はすぐ折れた。
≫あなたが「割り切れ」って言うから、割り切ろうと思って。それで他の人とのお泊りデートにOKしたの。
≫それ言われちゃうと俺、何も言えねえよ。で、割り切れたのか?
≫割り切れたんなら、あなたに黙ってその人と会い続けてる。
このところいじけて愚痴ばかりだったが、清楚さと奔放さという霧子の持ち味がやっと少し戻ってきたと博之は思った。
博之はもともと霧子の際立った二面性とそれを包み込む優しさに惚れて掌中におさめていたいと思うようになったのだ。
駐車場に着き、動揺しているのでいつもより慎重に停めると博之は一番気になることを、おずおずと聞いた。
「大事にするって言ってくれたけど、これ以上奥さんのいる人は怖くていやだからもうこれっきりにしたわ。まぁ、また寝るかどうかはひろ次第かな」
「そうかい」
「もしその人が奥さんと別れてくれるなら、真剣につきあおうかしら」
「へえ」
軽口を叩けるほどには霧子も心身ともに回復しているのだろう。
それだけが安心だった。
JRの時間がきたため電話を終え、満員電車を経て会社に着き放心状態からいやでも現実に戻ったところでパソコンからチャットを打つ。
≫きり、ごめんな。
≫うん。
≫さびしかっただろ、ほんとごめん。
≫もういいの。
≫でも、俺にだまって男と会っただろ。浮気したな。
≫しょうがないじゃない。ひろとゆっくり話せる時間がないんだもの。どうせここで何か言っても、仕事してたら返事ももらえないことばっかりだし。
≫そうか、そりゃしょうがないな。
週の頭の、それも朝っぱらからチャットで言い合いもしたくないし、そもそも「浮気」という概念が自分たちの間では狂っていることがよくわかっているので博之はすぐ折れた。
≫あなたが「割り切れ」って言うから、割り切ろうと思って。それで他の人とのお泊りデートにOKしたの。
≫それ言われちゃうと俺、何も言えねえよ。で、割り切れたのか?
≫割り切れたんなら、あなたに黙ってその人と会い続けてる。
このところいじけて愚痴ばかりだったが、清楚さと奔放さという霧子の持ち味がやっと少し戻ってきたと博之は思った。
博之はもともと霧子の際立った二面性とそれを包み込む優しさに惚れて掌中におさめていたいと思うようになったのだ。