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埋み火
第3章 跳ね火
(ひろ、私のひろ)


 博之の伸びかけの髭のざらつきが口の周りにふれる刺激と、衣服から強く香るいつもの匂いに包まれて霧子は涙が止まらなかった。

 夢中で唇を重ね、舌を絡めた。





 会えないのは苦しい。

 でも、博之と離れるのはもっと苦しい。






 それが霧子の出した現状の選択だった。


 愚かしいと思っても、おそらく霧子自身が博之に幻滅するなり次の恋を見つけるなどして踏ん切りをつけるなりしなければ離れることなどできないだろう。


「手、洗ってくるから。鼻かんでろ」

「だめ」

「え?」


 霧子はキスしながら手を動かし、博之の黒いスラックスの盛り上がった股間を掴んだ。


「お、おい」


 霧子の唇にとろかされた博之の下半身は既に半分ほど堅くなっていた。

 それを優しく掴み、刺激を与えてやるとたちまち普段どおりの堅さを持った。


「今日は、すぐするの」


 玄関と小さな台所だけの狭いスペースで、立ったまま舌を絡めあいながら霧子は手の中の股間を刺激し続けた。
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