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埋み火
第3章 跳ね火
 まさか、今日に限ってこんな始まりだとは思っておらず、嬉しい不意打ちに博之は体が震えた。

 寝ながら霧子にすべて預け蕩ける舌戯を味わうのもいいが、跪いて一生懸命に奉仕してくれる霧子を見下ろすのも快感だ。


(その課長とやらの男のも、口でしてやったのかな)


 そう考えると少し悲しくなったが、今はいやな想像は頭の中から追い出すことにした。

 霧子が寂しさで苦しんで苦しんでやってしまったことだし、自分もその嫉妬を味わって初めて今まで霧子の抱えてきた苦しみがわかった。


(それにしても、きりは美味しそうに舐めるなあ)


 長さはあまりないが、少し太めのペニスを霧子は歯を当てないように注意しながら口全体を使って舐めたり吸い上げたりしてくれる。

 妻や昔つきあった女にくわえてもらったのはたったの数度、それもいやそうに口から吐き出されたことすらある。

なのに、霧子は嬉しそうにいつまでもしゃぶり続け、博之が感じる部分をひたすら舌で刺激してくる。

 執拗に裏筋をちろちろと攻めることも忘れないため、博之は背後の壁に両手をつき、崩れおちないようにするのが精いっぱいだった。


「きり、こんなにされたら出ちゃうよ……」

「いいよ」

「出ちゃったら、きりのこと気持ちよくしてやれないだろ」

「口でされるの、好きなんでしょ」


 裏筋を執拗に絶え間なく舐め回され、踏ん張ってもずるずるへたり込みそうなほど脱力しかけていた。


「だめだ、口もいいけど俺はきりに挿れたいんだよ。離して」

「んもう」


 肩に手を置くと、口からペニスを離して自分を見上げる霧子の唇は唾液とグロスの残りでいっそういやらしく濡れていた。

 霧子の繊細で大切なところに触れるのに、鞄やスマホ、電車の吊り革を掴んでいた手は汚い。

 ベルトは留めずに下着とスラックスだけをまた履くと、霧子の手をとって立ち上がらせ博之はさっと洗面所で手を洗ってきた。

 案の定、濡れた下着が気化熱で冷えていたので引き上げると股間に一瞬寒さを感じたが、あの布ごしに吸い上げられた感覚は今までにないものだったのでかまわない。
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